007/スペクター

007/スペクター



を先行上映の初日に見てきたのですが。前作スカイフォール同様に「なんだこれ?ひどいシナリオだな」と思ったので頭から振り返ってみます。



http://www.007.com/spectre/?lang=ja



オープニングシーン。前作同様、ジェームスボンドはどんな目的を持っているのかも提示されずにメキシコにいます(アクション映画ではよくある事)。

「死者の日」という祭日のために街は人でいっぱい。 今まで見た映画の中で最大規模の「死者の日」シーン。モブの人数が多すぎ。しかも全員が仮装している。すごいスケール。

しかもメキシコの1stカットで2分はあろうかという長回し。「おっ、いいじゃない」と想いました。まあ、芝居らしい芝居もないしアクションするわけでもないんですけどね。

ホテルのバルコニーから出てビルの屋上を歩いていくボンド。向かいのビルにいる男たちの会話が聴こえてくる。いつ盗聴器を仕掛けたのか、その男たちは誰なのか、そういう些細(じゃなくてけっこう大事)な情報は全部すっ飛ばすのがこの映画。

「スタジアム爆破計画の情報を得る」「キーパーソンである『ペイルキング』の名前が出る」と、ボンドは向かいのビルの屋上(とても目立つ場所)から室内の人間を射殺。なんで殺したんですかね。悪い奴だからか。

流れ弾がブリーフケースに当たったからか、男たちのいた部屋で大爆発が発生。テロとしか思えないレベルの爆発なんですけど原因を描こうとしない。誰かが意図的に起こした爆発なのかも分からない。そういうのはサム・メンデス監督にとってどうでもいい情報に分類されるみたいですよ。派手な画が見れればいいじゃんそれで、ってスタンス。

崩壊したビルを避けたボンドは部屋にいた白スーツの男(あの大爆発を生き残ったんだね!)を追いかけます。白スーツは仲間がよこしたヘリコプターに乗って逃げようとするのですがボンドが追いついて飛行中のヘリ内で格闘開始。

このヘリ内アクションはヤバいです。良い意味で。いつ落ちるか分からないスリルがスパイスになっていてかなりのスリル。パイロットにも攻撃を仕掛けるボンドのせいでヘリは上下逆さまになったりして、メキシコ市街の大群衆を恐怖に陥れるのですが、なんだかんだでボンドが生き残ります。

このヘリ内アクションでボンドは白スーツ男が付けていた指輪を奪い取ります。この指輪は世界で暗躍する闇組織スペクターに所属していることを示す重要アイテムなのですが…なぜボンドが指輪に目をつけて格闘の最中に奪い取ったのか、まったく理由が分からない。

もちろんこの格闘シーンも、ボンドが何を目的にしているのか分からないので、ひたすら逃げている相手を追いかけて殺そうとしている狂人にしか見えない。相手の素性も分からないから爽快感もない。

後のシーンで「前作で死んだMから『殺して』と頼まれていたから」という理由が提示されるのですが、物語のきっかけを前作で死んだキャラクターに押し付けるのはズルいし、ダサい。Mってそんなキャラ(ボンドに人殺しを頼むババア)なの? そんなテキトーな遺言でホイホイ人殺しに行くボンドって人間としてどうなの?

最初のアクションが落ち着いたところでオープニングタイトルがスタートするのですが、これが異様な美的センスに満ちた奇妙な代物で! ボンドが奪った指輪にはスペクター(SPECTRE=幽霊の意味)のロゴマークが刻印されているのですが、このロゴがタコ(蛸)に見えなくもないということで、巨大なタコをモチーフにしたイメージ映像なのです。

裸のダニエル・クレイグ(笑える)、その周りを取り囲む女たち、過去作に登場した数々のキャラクターたち。それらをまとめあげるタコ! 集大成を思わせるような構成なのですが思い入れがないのでピンと来ません。作中の流れの中で伏線回収できないからって、目配せ程度のイメージを見せてれば007ファンは納得するんですかね。

メキシコで騒ぎを起こしたボンドは停職処分に。停職だろうがクビだろうがテキトーに世界を周遊してるボンドにとっては痛くも痒くもないように見えます。仲間たちが不遇を背負わされようが常にクール。なぜなら彼は007シリーズ主人公であり、必ず勝利するから。

停職になったボンドはテクノロジー担当というかガジェット全般を担当するQという眼鏡ギークキャラに会いに行きます。

ここで後の展開に登場する様々なアイテムが提示されるんですけど、伏線を張る作業としては至極ヘタクソで快楽につながり得ない。クライマックスで爆弾になる腕時計なんか「それ、アラーム音が大きいからね」とか説明していて、バレバレで白ける。予測させておいた上で裏切るならまだしもそのまんまですからね…

ボンドが体内にナノマシンを注射され、世界の何処にいても居場所がトレースされる状態になるくだりもしょうもない。Qもボンドも当たり前のように施行してるから「君たちナノテクで自由奪われるのに抵抗感ないの?」って思う。思うよね普通?

そのナノテク追跡機能を逆手に取る展開とか、この段階では予想してなかった驚異的デメリットにボンドが苦しめられる展開とかまったく無い。GPS機能がついた携帯電話で済むような要素をわざわざ取り入れる意味がない。

Qの元から盗み出した秘密兵器つきスポーツカーでイタリアのローマを疾走するボンド。なぜボンドがローマにいるのか、これまた分かりません。

とにかくこの映画、ボンドが何を考えているのか、何を目的に行動してるのかが分からない時間が長すぎる。

ローマでは葬儀に出席中の未亡人に接触をはかるのですが、近付いて拒否される。でも戦闘能力を示してから甘い言葉をささやけば女はすぐ落ちます。なぜなら彼はボンド…ジェームスボンド!

そもそも、この未亡人に接触するために見張りを当たり前のように殺しまくるんですけど、人の命を奪う事への抵抗が全く感じられないのが…やっぱり違和感あります。銃を撃てばほぼ必中。敵の銃は絶対に当たらない。なぜこれほど強いのかというと生誕50年を迎える人気シリーズの主人公だから。

こういった「主人公だから、ボンドだから、負けないし強いしモテる」っていう基本設定に脚本家が最初から最後まで甘えてるんですよ。まったく感情移入できない。こんな姿勢でシナリオ書いてたら50年の歴史を重ねてきたこのシリーズも若い世代に見限られますよ。

未亡人(オープニングの白スーツの妻)とのセックスで情報を得たボンドは、未亡人をやり捨て。謎の組織スペクターの会議場へ。どうやって潜入するのかと思ったらスペクター指輪を見せるだけで入場を許可されます。

場内ではスペクター所属の会員たちが実行してきた悪だくみを発表し合ってるのですが、この内容も幼稚でくだらない。ちょっと世相を操作して金儲けしました、程度のスケール小さい奴らばっかり。

ここで今作のラスボスであるクリストフ・ヴァルツが登場するのですが、彼のキャラクターを立てるアプローチがぬるい!

「声を上げずに側近の耳元で囁くことで自分の意思を表示する」という演出は、俺が『新宿オニごっこ』でやったやつ!つまりダサい!ささやきによって展開につなげたりキャラ掘り下げるならまだしも、特に意味ないからくだらない。(新宿オニごっこはちゃんと展開考えてるよ!)

ヴァルツが演じるオーベルハイザーは、昔の事故で死んでいたと見なされていた人物だそうですが、今作で初登場したキャラクター(過去作に出てた?知らんけど)が死んでいたとか実は生きていたとか、本当にどうでもいい話。掘り下げるべき背景はそういうところじゃないだろ!

オーベルハイザーは会議場にボンドがいる事に気付き(正面突破すりゃバレてるの当たり前だ)、気付かれたボンドはヤベえ!と逃げる事に。

やはりこの場面でも、ボンドには慎重さもないし恐怖もないから緊張感がない。つまらない。逃走アクションも乗れない。主人公だから絶対逃げ切れる。

ここでボンドを追うのは元プロレスラーのバティスタ(バウティスタ)。スペクター内で唐突に頭角を現したキャラクターなのですが、登場シーンからしてダサい。この映画はキャラを立てるというアプローチがどれもこれもセンスない。ひどい。

ボンドとバティスタの1対1カーチェイスが行われるのですが、アイディアに乏しくて引きがない。ボンドは新型車に搭載されたオプション機能を駆使して逃げ切る事に成功するんですけど、そのオプションというのが後方への火炎放射と飛行機に付いているようなパラシュート式の脱出機能

なにこの平凡な機能…つまんねえ。ギャグにすらなってない。アホらしい。過去作へのオマージュなのかもしれないけど、くだらないよそういうの。

カーチェイスしながらボンドはQに電話して話を進展させます(あれこれについて調べておいてね、みたいな命令)。これは良いなと思いました。

しかし気ままなボンドに引っ張り回されるQやマニーペニーの狼狽っぷりがまったく伝わってこないのが駄目。彼らを含める元MI-6組が社内闘争に巻き込まれて子供じみた不満を上げてるだけにしか見えない。ましてやボンドと別行動してるから生き死にとは無縁の立場に立ち続けているから「それ単なる権力争いじゃん」って。

ボンドの居場所が上にバレたらヤバいぞ!?という(バレるかバレないか)サスペンス性も皆無だからぬるぬる。

ボンドの次なる旅行先はどこだっけ? またも(ボンドさん何しに来たの?)状態なのは一緒。

よくわかりませんが白髪の老人(過去作のキャラっぽい)と会ったボンド。ボンドが次の旅行先へ行く前に知るべき情報をすべて吐き出した老人は拳銃で自殺。緊迫感ないし、じいさんに拳銃を持たせたボンドには罪悪感ないし。平坦。

このタイミングで「ボンドの暴走をいさめていた上司(M)がボンドを擁護する場面があって、「定番の展開だけど良いなあ」なんて思ったんですけど、フリも何もないから唐突さは否めない。同じようなジャンル、同じようなシチュエーションでもっと燃える描写いっぱい見てきたでしょあなたたち!

今度のボンドはオーストリアへ移動してモダン()な建物に入っていきます。そこにいる女性医師に馴れ馴れしく近づくボンド。チャラい態度で問診を受けます。

あ、なるほど。どのシーンもボンドがニヤニヤしてるからムカつくんだ!物語後半だぞ?

女性医師=はちょっと前にボンドの前で自殺したじいさんの娘だそうです。言動が不穏当なボンドを追い返した女性医師でしたが、直後にバティスタが彼女を誘拐。その姿を見たボンドは追いかけます。

このアクションシーンのきっかけになる流れもカッコ悪いよなあ。ボンドが常に余裕ぶってるのは結構だけど、自分の不注意(なめた姿勢)で周囲に危機を何度も呼びこんでるのに一向に反省しない。成長しない。ずっと馬鹿。でも主人公パワーで負けない。くだらない。

車で逃げたバティスタを大きめのプロペラ機で追うボンド。決定的なアイディアもないままなんとなーく追いかけて、救出成功。印象の薄い、冴えないチェイスシーン。なんのためにさらおうとしたのかも分からない。しいて言えば「女医をボンドに近づけるため」なんでしょうね。くだらない。

ツンツンしてた女を救ってやるとすぐなつく、という使い古されたパターンに乗っかってボンドに同行するようになる女医のセドゥさん。「すぐなつく」というのはちょっと誇張か。しばらくはボンドを信用しないスタンスをキープしてましたけど、ね。

セドゥは父親との思い出の地にボンドを案内し、そこで次の目的地を知ります。移動して情報得て移動して情報得て移動して…これの繰り返しに、金かけたアクションシーンを折り込むだけの単調さ下手と言わずしてなんと言おう? ボンドは主人公の威光で常に正面突破するだけだしなあ…

列車で移動中のボンド&セドゥ。セドゥさんってば、ちょっと派手めのドレスを着た直後から急にニッコニコの女の子モードになるのがワケわからなすぎて困惑しました。ツンからデレになるならきっかけ描かないとダメですよね? そんなの日本のC級ラノベ作家でも踏まえてるセオリーですよ。

2人がちょっといい雰囲気になったところにバティスタが乱入。スペクター側に常に居場所がバレてる事に対して危機感抱いたらどうなのボンドさん? バレてるなら裏かいて反撃するとかさあ…愚直さは時に魅力だけど、諜報機関の凄腕エージェントとしてのスマートさはまったく感じられない。キャラクター性が貧弱!

ボンド&セドゥはちょっとしたコンビネーションでしつこい襲撃者バティスタを列車から追放してホッと一息。バティスタの首に荷物をくくりつけて突き落としただけなので後でもう1度出てくるんだろうなと思ったのですが。この半端な描写でバティスタはお役御免。出番終わり。映画見終わった時に「え、あの時にバティスタ死んだんだ」って気付いてビックリしましたよ。

バティスタを振り切ったボンドはいよいよスペクターの大物(ラスボスなの?)であるオーベルハウザーの居場所へ辿り着きます。場所は砂漠のど真ん中にある使途不明のプラント。石油精製用なの?よくわかんねえけど。

オーベルハウザーさんは「すべて私が仕組んだ!」とか楽しそうに語ってるんですが、悪としてのスケール感を感じさせるような論理性が無い。異常さを際立たせるようなバックグラウンドストーリーもない。作り手サイドがそういう背景や世界観の深みをまったく必要としていないんだろうなあ。ビジュアルもチンケだし。

セドゥが父親の死亡シーンを無理やり見せられそうになると途端に狼狽するボンド。ほれた女が傷つくのは我慢できないってか? どうも作中における整合性に欠ける気がする。主人公ジェームス・ボンド人間性という部分に置いてさえも、ブレブレに見えるんだよね。

しかもここでボンドがうろたえるのも、スキを作って背後から殴打されて気絶させるための雑なフリに思えるし。そもそも、ジェームス・ボンドともあろう男が無名キャラに背後から殴られただけで気絶すんなよ! スタンガンとか使えば? ディテールを掘り下げる余地が無限にある映画。

ボンドが気絶から目覚めると両手両足はおろか頭部まで固定された拘束チェアに座らされている。脳のどこぞを傷つけると他者の顔を認知できなくなる(こわーい!)って話なんですけど、見た感じ地味すぎる。『カイジ』では内耳から脳まで貫く針でスリルを演出してたけど、脳にドリルを刺されたボンドのリアクションは普通の傷めつける拷問との差が見えない。幻覚描写とか、ビジュアル面で遊べばいいのに。

腕時計爆弾で窮地を脱したボンドはセドゥと逃走。そんなに必死に逃げるくらいならもっと早い段階から慎重に行動すればいいんじゃないのボンドさん!? 逃げる直前、両手を結んでいた拘束バンドを力づくで引きちぎる描写には逆にフレッシュさを感じました。

プラントから脱出したボンド(安っぽくて緊張感のない銃撃戦あった)。映画史上最大規模の爆破シーンってのがここで披露されるんですけど、とにかく盛り上がりに欠けるから「だから何?」ですね。

ボンドたちを追い込んでいた「MI-6がMI-5に吸収されちゃう問題」ですが、「ボンドたちの力を奪い取る全世界的監視システムの完成が迫る!」という分かりやすいピンチに置き換えられます。最初から最後まで危機の具体性が無いところもこの映画のダメなところ。実質的に組織として機能してない(ボンド個人に振り回されてるだけの)MI-6なんだから、体制維持に必死になる意味も分からないんだよね。

MI-5が企んでいたシステムは、眼鏡ギークのQが頑張って阻止。敵が予想し得なかった斬新な方法でシステムを攻める、とかじゃないんです。「Qは優秀だから」、国家レベルのシステムにも侵入できるし、破壊できる。前作でも見られた「ハッキングできるやつはなんでも出来る」という万能感が相変わらずだっせえ。MI-5側も、MI-6の動向を監視しているくせに抵抗されることを予想してないところがバカだなーと感じる。

順序を無視して書くと、監視システム完成の背景として「9ヵ国の同意を得られたから」という展開があるんです。9ヵ国のうち南アフリカだけが国家間での情報共有に反対してたんですよ。しかしこのアフリカが賛成に転ずる流れに一切の論理性が無い。時間が経ったらなぜか賛成してた。国家を動かすような得体の知れない圧力をスペクター側が生み出した結果として・・・なら分かるんですけどそういう流れ一切なし。くだらねーなーと思いました。

なんだかんだで最終決戦の場はロンドンのMI-6本部ビル。前作で爆破テロの標的になって崩壊しかかっています。

ボンドがラストバトルに挑む直前、セドゥが唐突に「私は行けない」とか言い出します。戦闘力が低い女子なんで「そりゃまあそうだよね」とか思うんですけど、これまで危険に付き合ってきたので不自然なのは間違いない。ボンドが「君は来るな」とか言うべきでしょ普通。

しかもこのセドゥ、オーベルハウザーに拉致されてボンドのピンチを招くんです。なんだそのくだらない展開。「護衛つけてなかったの?」って当然の疑問が浮かぶんですけど、アホばっかり出てくる映画だから護衛も付けてなかったような気がしますね。

なんかもう・・・全ての展開が行き当たりばったりにしか見えないって! 敵の行動を予測したり、その裏をかいたりする駆け引きが皆無。頭を使うキャラがどこにもいないんだ。

プラント大爆発を生き延びたオーベルハウザーさんは顔面に裂傷を負い、片目を失ってます。(このビジュアルもセンスねえわ・・・)

ボンドをおびき寄せ、「女をさらってやったぜ」「このビルあと3分で爆発するから!」とドヤ顔。ボンドはビルからの脱出とセドゥ救出ミッションに挑みます。まあ、ミッション成功するんですけどね。こういう場面でもリスクに挑む勇気を描くとか、二者択一の選択を迫られるとか、もっと盛り上げる方法はいくらでもあるはずなんだけど工夫がさっぱり感じられない。

セドゥをお姫様だっこして階下へダイブするとそこにはなぜかネットが張られていて無事に着地。どういうカラクリ? MI-6の構造を知ってるからそういう無茶が出来るのかもしれないけど、9割がた「運が良かっただけ」だよね!? もっとカッコ良い救出描写を演出してくれよ。

ラスボスであるはずのオーベルハウザーは自分が爆破を生き延びたくせに、ボンドが爆破で生き残る可能性を考慮していないんですよ。こういう部分が本当に本当にダサいし、キャラクターとして浅すぎる。バカ。アホ。魅力ねえんだよ!

ボンドはオーベルハウザーが乗ってるヘリに向かって拳銃を発射。何度か撃ってるとヘリの急所に命中して撃墜



なんじゃそら!!!



その拳銃がいかに特別なのかをあらかじめ語っておくとか、ヘリ自体がいわくつきとか、Qがプロデュースした秘密兵器が残ってた!とか、とにかく拳銃でヘリを撃ち落とす事に説得力を持たせろよ!!!

百歩譲ってヘリが落ちてもいいんだけどさ、事態が思い通りに行かなかった事に対するオーベルハウザーの反応がラスボス感ゼロの単なる小物キャラの範疇に収まっていて。ボンドの反撃をまったく予想してないアホっぷりにもムカつくし、ヘリから這い出てくる姿のカッコ悪さにもムカつくし、そんなキャラをクリストフ・ヴァルツに演じさせている事にもムカつくし。

ラスボスなのに、爆弾セットして逃げただけ。ボンドを殺したいのか殺したくないのかも分からないし。自身は戦闘能力皆無だしどこに魅力を感じればいいのか。

オーベルハウザーに拳銃をつきつけるボンドですが、「弾切れだ」と言ってヒロインの元へ。オーベルハウザーへのお仕置きを期待する観客を裏切ってクライマックスは終わり。メタ的なハズシというよりも、やるべきことをやろうとしない無気力演出にしか見えないですね。

ちなみにボンドとは別のところでMがMI-5のトップ・デンビを追い詰めていたのですが、こちらの死にっぷりもあっけないそっけない味気ない。とことん、カタルシスの無い勝利でした。

最後はボンドが愛車アストンマーチンに乗って走り去るという伏線回収を済ませて終わり。どうっでもいい伏線ですけどね。MI-6再興するのかな? まあ知ったこっちゃないですけど。

スタッフとキャストは膨大な制作費で世界各地で派手なロケできて楽しかったんでしょうね。制作費に見合ったスキのない脚本を書いていただきたいものです。ここまで書いてきた内容、私怨から生じたイチャモンに見えますか?

映画秘宝に寄稿した青井邦夫と中野貴雄によれば「『ミッションインポッシブルがファストフードで、007は銀座に本店があるようなレストラン」「一級の大人のエンターテインメント」だそうですよ。

・・・マジで言ってんすか!?

サササッと短時間で作られた(けどめちゃめちゃ美味しい)ローグネイションと、じっくり手間ひまかけて作り上げた(けど味付けが下手すぎてくっそまずい)スペクターなら、俺は前者を食べ続けますよ。

こんなに稚拙でテキトーで、人間もドラマもアクションも描こうとしていない脚本なのに「クレイグボンド最高傑作」とか言ってる大人がいっぱいいるので、私は二度と007シリーズを見ることはないと思います。世界で一番映画をなめてる人間、それこそが007監督のサム・メンデスだよ!