スター・ウォーズ/フォースの覚醒

スターウォーズ/フォースの覚醒



見ました。ユナイテッドシネマズとしまえんにて、12月19日午前9時の回を、IMAX3D版で。






スターウォーズと私、みたいなスタンス紹介は面倒くさいので書きません。






オープニング、あっけらかんとした字幕で背景を説明するスターウォーズ文体は相変わらず。エピソード4-6の主人公ルークが失踪、帝国軍やレイア(将軍でありルークの妹)たちが彼の行方を追っている状況だそうな。レイアは一人の優秀なパイロットをとある惑星に送り込んだ、と。



夜の惑星で老人からペンダントのような物を受け取る男。すごく大事なアイテムらしい。同じ星に降下船に乗ったストームトルーパー(白いアーマーを着た雑魚兵士)が大量に押し寄せる。その中で一際目立つ黒いアーマーの男。



ペンダントを受け取ったのがレイアの使者であるポー・ダメロン。黒いアーマーを着ているのがカイロ・レン。



カイロレン率いる帝国軍部隊は村人を虐殺してポーを炙り出そうとする。ポーは球体型ドロイドBB-8にペンダントを託して「遠くへ行け!」と命じる。カイロ・レンは圧倒的なフォースの力を見せつけてポーを捕らえる。



…という流れ、子供でも分かるシンプルなカット割りで描かれていきます。



(個人の感想→)僕がスターウォーズを見てて一番違和感があるのはストームトルーパーが兵士に見えないところなんですよ。チンタラ歩いて馬鹿みたいに光線銃をバラまいて、テキトーに死んでいく。相手が戦闘能力の無い民間人であったとしても、人間が戦ってるように見えない。



そんな無機質なストームトルーパーなんですけど、1人だけやたらと大袈裟な芝居で人間味を強調する奴が登場するんですね。民間人を撃つことに躊躇したり、仲間の返り血に狼狽えたり。



このストームトルーパーは予告編でヘルメットを脱いでいた黒人キャラ(フィンという名前を付けられる)なんですが。アーマーを着たフィンの感情表現って、戦場の緊張感の無さとストームトルーパーに対する演出不足が下敷きにあるからこそ成立してる(理解できる)ものなんです(断言)。



率直に書くと、ストーリー展開がスターウォーズ的なゆるいリアリティと古い世界観の範疇でしか動かないから面白さを実感できないんですよ。なんで?と指摘し始めたらキリがない。



一種の幼稚さを受け入れるのが大人なんでしょうけど、世界観以外にもこの作品のシナリオに弱点が多いからノリきれないし燃えきれないんです。(←個人の感想です)



ポー・ダメロンはカイロ・レンのフォースの前に成す術がなく、帝国軍の捕虜となります。



物語は謎のペンダントを託されたBB-8の行方にフォーカスしていきます。



ポーやカイロ・レンが立ち回りを見せたのと同じ星でスカベンジャー(廃品集め)として生活している少女・レイ。砂漠のど真ん中で沈黙しているスターデストロイヤー(巨大戦艦)からパーツを取り外して業者に買い叩かれる日々。家族はいないらしい。



砂漠ですれ違った人物(異形のエイリアン)がBB-8を網に入れて引きずって歩いてるのを見て「放しなさい!」と言い、開放させます。



…他人が持ってるドロイドを勝手に奪うのは普通の事なの? そりゃまあ観客としては(可愛い上に大事なアイテムを持ってるBB-8を引きずって歩くなんて非道い!)と思ってるだろうからレイの行動は間違ってないんでしょうけど、雑魚キャラには雑魚キャラなりに行動原理が欲しい。レイとBB-8の出会いがこんなにアッサリ(たまたまというか運が良かっただけ)で良いのかな?と思いました。



カイロ・レンはポーをフォースで拷問し、ペンダントを隠したドロイドの存在を吐かせます。このフォース拷問描写はフリになってる上に新鮮だったんじゃないでしょうか。



レイが再びジャンク屋に赴くと、店主から「そのドロイドならこれだけ(大金)を払うぞ」と提示されます。レイは悩まし気な顔をBBに向けて「悪いわね」とつぶやきます。



そして「売りものじゃないわ」と続けて大金を諦めます。ここの緊張→緩和演出は見事でした。



ストームトルーパーの黒人ボーイは相変わらず苦悩していて帝国軍兵士としての意義を見出だせないままで、特に決定的なきっかけが無いままに裏切りを決意。



黒人ボーイが新兵のくせに単独行動とか、捕虜と一対一で行動できるとか、相変わらずリアリティに欠ける状況が展開。ポー・ダメロンを逃がしてタイファイターに乗って逃走する流れもスリルが無さすぎて納得できません。帝国軍の警備はどこもかしこもゆるすぎ



あとは主要キャラを簡単にくっつけてしまう感じが面白みに欠ける。くっつける(出会う)のは構わないけど、もっとタメがいるでしょ(←個人の感想です)。



ポーと黒人ボーイ(FN-XXXXという固定番号を由来にフィンと名付けられる)は、あと一歩のところでカイロ・レンの乗る戦闘機に撃墜され、ジャクーに不時着。フィンは自分が乗っていた機体に駆け寄るが、ポーの姿を見付けられず、彼のジャケットを形見に砂漠を彷徨う。



惑星ジャクーを再び襲撃する帝国軍。レイはBB-8を奪われまいと両手持ちの棒(鉄パイプ的な)で戦う。その光景を見ていたフィンは間に割って入り、レイを救おうとする。レイの棒さばきは見ててフレッシュだったんですけど、特に伏線にならなかったから残念でした。



ジャクーにはなぜか宇宙船が沢山駐められているのでレイとフィンはそれを目指してダッシュ



「あの船は?」「あんなオンボロ船ダメよ!」「じゃああっちの船!」



目の前で船が大爆発(CMでも見れるやつ)



オンボロ(ミレニアムファルコン)に乗るしかない!



という流れ。工夫が無いとは言わないけど、主人公たちと「ミレニアム・ファルコンという象徴」があまりにもあっけなく結合するのに違和感。「出会い」までの「タメ、流れ」が存在しない。乗ってみればオンボロでもなんでもないし…



レイとフィンはジャクーから逃げられたわけですが、すぐに中型のドック船(なんて表現すればいいのかわからない)に捕縛されてしまう。そこにいたのはハン・ソロとチューバッカ。



「なぜ俺の船に乗ってるんだ」「帝国軍から逃げてきただけ!」「チューイ…家に帰ってきたぞ」「おおおおおん!」



などというやりとりがあるんですけどね。



これも「簡単にくっつく」典型で。つまり、旧シリーズファンが待ってる要素(いっぱいある)を作中に配置しようとすると、要素と要素の距離感がせまくなって、いかに作りこむかという部分に工夫を盛り込めない。本当に上手い脚本になり得ないのも致し方ないってことなのかもしれません。残念。



ハン・ソロが取り戻したかったであろう船はジャクーのジャンク屋のそばに放置されてて誰でも乗れる状態だった。意に反して船を奪われていたハン・ソロはなぜミレニアム・ファルコンを手放したままだったのか? この辺のロジックがよくわかりません。



「出会った」レイ、フィン、ハン・ソロの元に借金取り傭兵軍団がやってきて、テンヤワンヤ。ここで『ザ・レイド』に出演していたインドネシア人俳優、イコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンが登場。スターウォーズファンがハリソン・フォードの登場に興奮したように、私はこの2人の登場に大興奮。



しかし2人の超絶アクションは不発のままで、巨大モンスターにあっけなく食べられてました…残念すぎる。(でも後半でトンファーを使った格闘アクションが出てくるので、そこはイコ・ウワイスが振り付けしたシーンなんじゃないかとにらんでます。)



2人の扱いはともかく、巨大モンスターで大混乱に陥るこのシーンはスター・ウォーズらしい派手さがあって良かったと思います。あとはチューバッカの感情表現が良かったですね。「ジョージ・ルーカルは人物の演出がまったく出来なかった」というのも納得しちゃうほど、チューバッカというキャラが旧シリーズより魅力的になってます。



主人公たちはハン・ソロの導きで安全と思われる星へ移動。酒場を牛耳る新キャラ(眼鏡っ子)が登場。ハン・ソロの旧友だそうな。



『フォースの覚醒』は「レイがBB-8を堂々と連れ回すから帝国軍にすぐ居場所バレるんだよ」とツッコみたくなりますね。この場面でも帝国軍と通じてるチンピラがBB-8の姿を見て通報するんですよね。「うかつ」「不用意」「緊張感がない」行動をあまりにも連発されると、萎える。個人的にすごく嫌いな要素。



この酒場にはなぜかルークのライトセーバーが安置されてます。ハン・ソロが関わってる場所にそのライトセーバーが保管されてるのは、ありえなくもないので納得。このライトセーバーはキーアイテムとしてどう転がっていくのかが分からなくなったり、タメを効かせた使われ方にもなってるから面白かった部分です。



レイはライトセーバーに触れた瞬間に幻視を目撃し、ショックを受けます。この時点でレイは「横暴に立ち向かう勇気」とか「帝国軍への憎しみ」も持っていないフラットな存在。故郷に戻って、家族を待つという初期衝動に回帰するところが意外性ありました。



そしてフィンも帝国軍から逃げようとするだけのヘタレ野郎。「簡単に出会ってくっついた」レイとフィンが別れるという展開は面白かったです。だからこそ出会いにツイスト(ひねり)が欲しかったなあ。



2人が別れた直後に帝国軍が襲来。レイとカイロ・レンが対峙することになります。



そこにレイア率いるレジスタンス軍が助けに来るものの間に合わず、レイは帝国軍にとらわれてしまいます。ポーの操縦する戦闘機が暴れまわる姿は素直にカッコ良いなあ!すげえ!と思いました。



この辺りでレイアやC-3POR2-D2などが登場。おばさんと化したレイア、おじさんと化したハン・ソロが再会する場面は、問答無用、理屈抜きでジーンと来ます。どうしても役者としての人生の重みと壮大な時間の流れを感じさせられる場面なので。



挙動で笑わせてきたBB-8に加えて、しゃべるコメディリリーフとしてのC-3POが登場することで映画全体が締まります。一方でR2-D2は「ルークがいなくなってから動かなくなった」という設定を与えられています。どういうタイミングで動き出すんだろう?と好奇心を刺激してくれる設定。



さらにはカイロ・レン(仮名)がハン・ソロとレイアの息子であること、ルークがカイロ・レンをジェダイとして鍛えていたけどドロップアウトしてダークサイドに堕ちてしまったこと。などが情報として提示されます。



映画は「父親になりきれないのハン・ソロが息子ともう一度向き合う物語」になっていきます。30代男性な自分としては、この物語に心を奪われていきます。今回のレビュー、あれこれ苦言を呈してますが、自分はこの映画を見ながらトータル10回くらい泣いてますからね。



レイアがハン・ソロに向けて「ルークはジェダイ。でもあなたは父親よ」(だから自信を持って!)というセリフは超感動しました!!



カイロ・レンがレイを拷問する場面。カイロレンのフォース(意思の操作)がレイに通じない! 苦痛に耐えながらもフォースをはねのけてみせるレイの姿はめちゃめちゃカッコ良いし、改めて「うわ、この女優さんめちゃ綺麗」とか思いました。前半で見せていたポー・ダメロンの拷問との違いが、レイのキャラクターを引き立ててましたね。



レイア率いるレジスタンスはレイを救うべく球体型の帝国軍基地スター・キラーへの進撃を決定。スター・キラーってのはデス・スターの焼き直し以外の何物でもないし、ちょっとしたスキを突かれるとモロすぎるという構造的な弱点はエピソード4とまったく同じ。帝国軍ってのは過去の敗戦から何も学んでないのかな? 馬鹿なのかな?



ディズニーに「SWファンは旧シリーズと同じ事を繰り返していれば喜ぶ」って思われるのは損だと思うんですけどね。何十年後にエピソード10が4・7と同じことやってたら笑いますね。



レイはレジスタンスが自分を助けに来てくれていると知らず自力で脱出を試みます。しかし、拘束されている状態からフォースを使って抜け出すところは…「今まで見たことがない」ものではあるけど、もうちょっと演出をしっかりしていれば「すげえ!」感を掘り下げられたはず。甘いぞJJ。



スター・キラーを覆うシールドは割と簡単にOFFることができ、ハン・ソロやフィン達は敵の基地内部へ。レイが逃走した事を知ったカイロ・レンは激怒して「早く探せ!」などと暴走。



艦内に監視カメラとかまったく無いのかな? 馬鹿なのかな? と思っちゃいます。カメラが無いのは良いけど、一度も見つからないままにフィンとあっさり合流したのは「なんじゃそら」と思いました。シールドの除去もレイの逃走にまつわるスリルも、制作陣は「そこ」に面白みを見出だしていないから演出が質素すぎ。



結局ハン・ソロとカイロ・レン(本名はベン)が対峙して対話するシーンに集中しすぎて、前後のシーンでいかに面白い(熱い)ことを出来るかには気持ちが向いてないとしか思えないゆるさ。(←個人の感想です)



息子と対面したハン・ソロは説得を試みます。ベン=カイロ・レンは父親の説得の言葉に涙を浮かべますが(え、そういうキャラなの)、ライトセーバーで父の腹部を一突き。



まあこの場面も、「おまえらが個人的なトークしてる間に周りの状況はヤバいことになってるはずなのに物語としては停滞しちゃってますよ」問題が発生してます。テンポが悪い。



ポー・ダメロンがスター・キラーのコアを破壊したものの、全体が瞬時に爆発するわけではなくゆっくり崩壊していく。地割れが起きる地表でカイロ・レンとレイがタイマン。



このタイマンバトルではライトセーバーを駆使するカイロ・レンに対し、レイは棒で対抗。棒が折れたところで、レイが「まだ戦える!」って感じの意地を見せてほしかったですね。二刀流みたいな。



劣勢だったレイが奮起して反撃するのはプロレス的な展開としても当然なんですけど、レイの力を引き出すきっかけ(トリガー)がカイロ・レンが口にした「フォース」という単語なんですよね。



レイの反応を見る限り、「フォース」という単語を耳にしただけで彼女の中の才能が覚醒したように感じられる演出になってる。この演出は思いっきり肩透かし食らいました。ハッキリと「だっせーな」と思いました。呆れました。



その直後、ルークの形見ライトセーバーをカイロ・レンがフォースで手元に引き寄せようとするところで、彼を上回るフォースでレイが対抗するところは、燃えたし泣きました。中盤の伏線が効いてた。



しかし問題はカイロ・レンが弱いところ! レイやフィンと戦っても彼の強さが全然見えない。旧シリーズのダースベイダーのような存在感のあるヴィランにはなりそうにないな、という半端さに終始。今作を見た多くのSWファンは「なぜカイロ・レンは弱いのか」という疑問に対しての答えを探しているみたいですけど、原因の多くは「監督の演出に力が無いから」だと思います。



タイマンは地割れによって不透明決着。これはこれでアリだと思います。取り残されたレイの元に、チューバッカが操縦するミレニアム・ファルコンが現れて、スターキラー壊滅。イェーイ。



レジスタンスの本拠地にやってきたレイはレイアと無言の抱擁。下手なセリフを排除したところは非常に良かったですね。泣きました。



R2-D2がこのタイミングで、なんとなーく起動したように見えるのはすごく残念。ストーリーの都合とか色んな事情で、脚本家がよきタイミングで起こしたようにしか見えない。これも演出不足!! BB-8が近くに来たのを感じての起動とかなら理解できるけど、タイミングを待ってただけにしか見えないから萌えない。



R2-D2がプロジェクターとなって投影した2Dの宇宙地図に、BB-8がピースをはめる。「なるほどルークはここにいるのか!」って展開なんですけど。「BB-8の地図だけでも分かりそうじゃない?」と思いました。こういう細かい部分の詰めが甘いから子供向けだなーと。



ラストシーン、待ちに待ったルーク・スカイウォーカー再登場。断崖でレイと対面するルークはエピソード4のオビ=ワン・ケノービを思わせる歳のとり方。ルークは真のジェダイを育てられるのか? この2人は赤の他人なのか? それとも…



この想像力をかきたてるラストシーンは良かったですね。



トータルで振り返ると。ストーリーのポイントからポイントへ移行していく間の演出が弱いし、燃える展開をもっと盛り込めたはず。流れは悪くないけど、演出が弱い。天下のスターウォーズがこの程度の甘いシナリオ/演出で良いんかな?と思いました。



「新キャラクターが良い!」と言われてますけど、カイロ・レンは無駄にメンタル弱いし戦闘力も中途半端で、エピソード8で軌道修正しないとヤバいでしょ。フィンは凡人っぷりしか伝わってきてないから感情移入しやすいキャラとして使われるんでしょうけど、分かりやすい長所が無いとキビしい。



ダークサイドの大ボス・スノークアンディ・サーキスが演じている)はルックス的にガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとかぶってるけど残忍な性格とかの押し出し方では明らかに個性不足。



しかしデイジー・リドリーさん演じるレイは最高! 綺麗で可愛くて強い! 今作の時点で彼女のバックボーンはまったく謎で、それでいて最高なのに…「実はルークの娘でした」とか後付けの設定で「なぜ強いのか」という部分に理由づけしていくのはすごく無粋だと思う。そこが心配です。



エピソード8の監督はライアン・ジョンソン。『BRICK』と『LOOPER』という傑作サスペンスを生み出した実力派映画作家なので、JJエイブラムスに欠けていた部分をちゃんと補強した上でスキの無いSFにしてほしいです。



色々と文句を書きましたが、10回くらい泣いた『フォースの覚醒』でした。以上。