隣人13号

監督:井上靖雄[隣人13号]観ました。レンタル。DVD。

隣人13号 [DVD]

原作は井上三太。マツモトタイヨウのイトコですよ。みんな知ってたかい?

まずは井上三太にまつわる記憶。本来はアンテナに反応しないような作家なんですが、多分名古屋駅にあるヴィレッヂヴァンガードをうろついていた時に目に留まって買ってみたんだと思います。隣人かTOKYO TRIBEのどっちか。

原作の隣人13号を読んだ時は結構ショックを受けたと思います。洗練とは程遠い画風に、斬新なのかよくわからない展開。十三の別人格が13号、という設定に多少ポップ感は感じましたが、どことなく見切り発車な作品だった気もします。しかしスプラッタ描写はなかなか執拗で、画の圧力が伴っていればもっとズシンと響くマンガになっていたかもしれない。ただ、世界観にヤンキー的な文化圏を取り入れたところは割と新しい気もします。

2巻〜3巻になるとお膳立てが揃ってグイグイ加速。伏線が解かれていく気持ち良さ、みたいなものでなく、稚拙ゆえの凄み。明らかにアサハラショウコウみたいなカルト教祖が登場したりするところなんか苦笑しそうなんだけどクライマックスの勢いでまとまってしまう。


さて映画版です。監督さんはよく知りません。PVの人、って程度しか。

原作の展開とか殆ど忘れた状態だったのですが、いじめを回想するオープニングシーンから無駄に冗長で不安を覚えました。映画を撮れる喜びが溢れているとでも言いましょうか、PVやCMみたいなリズム感やテンポが不要なため、各シーンをしっかりじっくり撮ってる感が。かといってそんなに不快な遅さではなく、カット毎のセンスみたいなのもあるんですが、そこまでテンポ無視しなくてもいいんじゃないの、と思いました。

む、部屋に単行本ありました。読んでみます。

1巻の2話読んだだけで濃密…映画による展開の[薄め方]がかなりのものだった事を実感。展開こそ忘れていたけど色んなアングルは覚えていていて、映画を観ながら予感してはスカされ、スカされ、スカされ。

殺人事件を捜査する老いた刑事とか、復讐対象の妻とのからみとか、その息子とのからみとか、○○○を殺すに至る動機とか、VERSUSでおなじみ松本実aka死神の[過去]のみ取り上げてそれを伏線として取り上げずになんとなく終わらせたり、色んな部分が無視されてしまっているのはやはり違和感を覚える。

削るべき部分は削って構わないけど、濃度としてはガクッと下がっていると思う。観ている途中で後半の展開を思い描きながら[これくらいの映画でもサンダンス行けないのかな]とか思ったりもしましたが、やはり全体的にぼやけてたり説明が足りないですな。雰囲気だけは立派なサイコパスムービーですけども。

やりすぎだろ!というセリフで語られるラストシーンのアレンジについてはやはり疑問。悪魔じみていると呼べるかどうかという点から見てもいまいちいまにだし、そもそもその仕掛けを取っておく理由がわからない。

ほめるべき部分はやはり役者になってきます。二重人格を二人の役者が演じるのは斬新、みたいな評価がありましたが…まずまずです。中村獅童は顔面の構造自体が狂気じみていて殺人鬼役なんてお手の物だろうなぁ、と。演出もその部分はしっかり引き出していて、撮る側の思い入れも伝わってきます。下着のにおいを嗅ぐ描写もしっかり抑えてあって、いい意味で投げやりな態度が役にフィットしていました。

小栗旬は見せ場ほとんど無いです。感情を顕わにする希少なシーンである二重人格告白シーンはアニメーションにその座を奪われてしまっています。アニメでこそ強調されるグロテスク、という例もあるかとは思いますが意図としてはハズレだと思います。原作のラストシーンも見せ場になりえると思ったのですが、カットされて中村さんがフィーチャーされてしまいました。扱いの悪さにはちょっと同情します。

某芸人に似すぎの新井浩文、ワタクシはこの方存じ上げなかったのですが、存在感が見事に消えていて赤井というキャラに物凄くフィットしています。オーディションで選ばれたのかな?とかいろいろ考えながら、終盤での変化っぷりがなかなかのレベルで、エンドロールの名前を読んで[なるほど見覚えあるぞ]と思いググってみたりしました。

吉村由美については演技面で見るべき点もなく、演出はところどころ面白い事をしていましたが、人格が崩壊した後の描写が甘くなっていて原作とのギャップを感じると同時に寂しさも。赤井役同様、知名度低い人を起用して冒険する価値のあるキャラだと思ったのですが、ブラとかフェラとかのインパクトを考えるとハ゜フィーという手も理解は出来ます。

松本実は普通のキャラになっていたので原作とはかなり雰囲気が違っていましたが根性は感じられる演技でした。すみませんエラそうに。

劇団ひとりのからませ方は、アレンジの中でも[絶妙]といえる要素だと思います。評価したいです。ああいうのを映画で見られるってステキです。(あまり深く説明できない)

書ける事は全て書いておかないと気持ち悪いので全部書きました。以上です。多分。