トカ地獄映画祭

監督:戸梶圭太[トカ地獄映画祭]を観に行ってきました。

かねてより賛辞を送り続けてきた自称社会派作家・戸梶圭太、彼が自ら生み出した映画三本を一挙に公開!という事でトリウッドへGO。本日で上映終了です。三本まとめて¥2,100でした。受付には専門学校時代に教わったO先生がいて軽くビックリ。もちろん先生はチルさんの事なんて知るはずもないので挨拶は心の中だけで済ませました。

三本のうち二本は小説が原案となっているものの、諸般の事情からストーリーラインがかなり変貌を遂げています。どこまで取り入れて、どこを切り捨てているのか、を確かめに行くという意味もあったりしました。


まず一本目は[映画監督ゆみこ]。2004/DV/90分/原作:[トカジャクソン]収録。映画史上最凶の鬼畜アクション映画を撮るため、ゆみこは暴走する。(パンフより転載)

http://www.tokajungle.com/yumiko/index.html

とりあえずカット割りとか編集とか音声処理とかのクオリティが低い。映像の空気もDVっぽさが隠れていない。リズムとかテンポの悪さは原作を知っているからこそ、かもしれない。しかし中盤以降、原作と違う展開になってきた辺りからディテールはどうでも良くなってくる。

野原ゆみこ役の鈴木千佳子さんは声とかスタイルとかフェイスとかが良い。バリバリなシーンはバリバリに演じるし、かなりゆみこな雰囲気が出てた。原作者が選んでるんだから当然か。助監督デイブ役のブンゴマン氏もなかなか良かったけどなぜか失踪しちゃったそうですw

原作と違う展開という表現を使いましたが、いい意味で予想は裏切られる。妥協の産物としての変更でなく、展開がよりカラフルになっていて、映画としてパワーアップしているのは間違いないと思う。出版社から出すような内容とは違い、インディーズならではの毒もタップリ盛り込まれている。映画界をブッ壊すというテーマがより色濃く前面に出ていて全体をスイングせしめている。ん、変な表現。

原作の展開も殆ど削られる事なく、さらなる上乗せまで成された今作は結構凄いです。なにしろ90分なのでほとんど長編である。終盤の展開はかなり良いなぁ。。。規模としてもインディーズの枠を超えてたっぽいし、重要なキャラでSOG出演のはっとりさんみたいな女優さんも出てくるし(なんだそりゃ)、戸梶圭太によるアクション描写も斬新風味だし、ラストの締め方もなかなか乙。

うーむ面白いなぁ、と率直に感じた作品だった。細部のクオリティこそ改善の余地がありまくりだったけど、さすがはエンタメ作家です。一般層にも薦められるかも。


二本目は[囚人プロレス]。2005/DV/45分/原作:「燃えよ!刑務所」収録。近未来、刑務所の民営化法案が成立。運営資金はおまえら囚人が稼げ! ハイパーハードコアなプロレスで!

http://www.tokajungle.com/jcw_surv/index.html

原作における囚人プロレスの扱いは、あくまでも囚人による資金集めのうちの1つなのですが、映画化にあたってこの要素に焦点を絞ったようです。最初に民営化に至る経緯が原作と同様にテロップで流れるのですが、文面にアレンジが加えられていて笑えました。

ゆみこに比べるとあらゆる面でスケールアップしている。KAIENTAI-DOJOという実在のプロレス団体のフランチャイズ会場を使用してたりエキストラが100人単位だったり。映像の空気もDVっぽさが薄れ、テンポやリズムのもたつきも感じなかった。録音の出来を含めた音声処理面は結構甘くて[むむむ]と感じるところが多かったが基本的にアクション映画だったので影響は小さいかな。

肉弾アクションにしろ小道具を使ったアクションにしろ、そこそこのレベルに達していてカメラワークもそこそこ。学生プロレスみたいに絶えず実況がしゃべり続けて間を埋めつつ、犯罪者を徹底的にバカにしながら展開されるプロレス風茶番。この作品も映画化にあたって展開に変化が加えられ、ゆみこみたくグイグイスイングするほどの変化ではないけど映画っぽい展開に飲み込まれていく。

45分の映画にしてはかなりテンションが上がったところで終わり。激安犯罪者を足蹴にしまくる内容は一般的に[眉をひそめちゃう対象]になりそうですが、テレビのニュース見てるだけでは見えない世界が描かれている…のかもしれませんな。うわ、適当なコメント。


三本目は[やら犯]。2005/DV/55分/原案:毎日見かける激安犯罪。カメラが偶然捉えた巷の激安犯罪の数々、日本はここまで安くなった!すべてがやらせの衝撃連発ドキュメント、しかし現実よりリアル!!

http://www.tokajungle.com/yarahan/index.html

これは完全オリジナルの映画である。ドキュメンタリーの体(てい)で、トカジ評するところの[激安野郎]を描く。これはかなり面白かった。どの作品も[偶然カメラが捉えた]という映像として成立していて、役者のリアリティもかなり精度が高い。

池袋西口公園でギターで弾き語る様を撮影していると…
彼女の浮気の証拠を押さえるために尾行撮影していると…
学生がどうしようもない純愛映画を撮影していると…

10以上のシチュエーションで低レベル人間を描ききっています。この作品を観れば[安いバカ]という概念が即座に理解できます。

みたいな書き方をすると[おまえ何様だよ]と言われそうですが、自分の中のサディスティックな部分を曝け出すのが怖くない人にとってはこの上なく笑える映画だと思います。ちょっとこれには参りました。エンドロールもカッコいい。


映画感想は以上。一本目を観ていた人間は自分を入れて三人だったのですが、二本目の囚人プロレスの際にゾロゾローッと15人くらい入場してきて驚きました。関係者集合しちゃった? トカジ師匠いたりしますか? と思ったのですが師匠はいませんでした。最後列にやたら大柄な人が座ったのですが、その方は囚人のうちの1人のヤクザの兄貴役の方でした。というわけでやっぱり関係者だったようです。

囚人プロレス終了と同時に殆どの方々が退去してしまってガラーンとした館内でボーッと待ちました。念のためトイレに行き席に戻ろうとしたら、入り口付近に…

戸梶圭太

う、トカジいたよトカジいたよトカジいたよトカジいたよ〜と困惑しながら着席。うーんどうしようかな、握手してもらうのもバカバカしいな、えいがびと名刺渡そうかな、あれ持ってきてたっけ、おーし持ってきてるぜ、やら犯観たら話そうかなどうしようかなうおーい、などなど思いを巡らせて。

上映終了したらトカジ先生いない。

でもでもそれでも。ニアミス出来て嬉しかったです。映画も面白かった!刺激受けた! っつーわけで長文でゴメンナサイ。