水霊

 ミズチ。ワーナーマイカル板橋にて観賞してきました。原作・田中啓文、脚本/監督・山本清史、出演・井川遥渡部篤郎
 どこからどうやって書こう。原作の田中氏ってかまいたちの夜2の作家さんなんだ〜
 シーン構成、その中に配置された情報量、それが生むリズム感は次第点(ウハ、エラそう)。もたつきにイラ立つ事なく観れた。
 序盤で気になったのは主人公(井川遥)が調査を進める動機。新聞記者である事、恩師が急死して残された遺留品、元夫の職業。その3点…かな? 時間軸も多少複雑なのでやや読みにくい。
 遺留品から物語が始まるというパターンは某金字塔ホラー「リン○グ」も同様なのでちょっと弱い。手帳そのものにもリアリティが足りない感じ。矢沢心タンももう少しキャラ作って良かったかも。
 元夫(渡部篤郎)の登場シーンからアルツハイマーを想起する観客は少ないのかもしれない。そこの部分を読み取れないと終盤のタネ明かしシーンが難解になるだろうなぁ。
 チルさんはアカギをしつこいくらいに読んでいたので、脳のレントゲン写真と「どれくらい忘れちまうんだ」というセリフですぐに分かったのですが。
 地震ニュースのしつこさの醸し出す伏線臭さが「遺跡が見つかったそうですよ」とあっさり解かれたのはややもったいない。地震→遺跡→施設の近くだった、という情報が明かされていくタイミングがもう少しバランス良く配置されてても良かったかな。
 それにしても黄泉とか死に水とかという要素は「SIREN」でも見られた意外に斬新なスケール感に繋がっていてグッド。
 中盤のピチピチガールズ(星井七瀬&山崎真美)ゾーンは開始早々に不気味さが発揮されていて、やや唐突だけどその唐突さにやまきょさんの個性を感じた。
 教室でシャーペンを使った自殺ってどっかで見たなと感じたのでもっとマニアックなカメラワークが欲しかった。目に突き刺す描写って眼球がハッキリ見えるように正面から撮って逆回転にするとかってダメなのかな。
 山崎嬢が死に至るシーンはねちっこい描写で被写体へのただならぬ愛を感じましたが気のせいでしょうか。多少冗長気味だった気はしますが、ドンドン追い込まれていく感じはグッドでした。
 星井さんが心配になって電話をかける時、どうしてずっと喫茶店に? と感じましたが、帰りたくなるような家ではなかったという事でしょうかね。だとすれば公園のブランコに乗ってた方が良いかな。
 星井嬢の死に様はこれまたグッドでした。眼球にアレ→一命取り留める→緩和→あべし、というコンボには監督のホラー愛を感じました。
 構成を正確に思い出せないのですが渡部氏が急激に狂っていくシーンは非常に良かったです。テンポもよくカメラワークもメジャー感あったなぁ。
 後追いで井川さんが渡部氏を追いかけて行くところは時間軸が曖昧で分かりにくかったかな。ほんの少し遅かった、という描写があると良かった。
 そのまま大山の病院へ行く井川さんだけど、そこもやや唐突。探しても探しても見つからずに焦る→大山から着信、みたいな描写があっても良かった気がする。
 井川さんの慟哭は良いです。
 ラストの井川さんの‘真相’はやや弱い感じ。目をそむけていた事実、事実に向き合う事ができなかった理由、をもう少し明白にしても良かった気がします。やや不条理すぎ。
 不運な事故で死亡した。同時に井川さんも頭部にショックを受けていた、とか。でもそういう理由付けは「伏線を回収する」という形でないとフェアじゃないのか。大変だなぁ。
 ラストカットは、まぁ、えいがびととしてやっておきたいパターンといえるのかも。最後にエラそうな事言ってしまった!
 総評としては、面白かったなぁ。伏線とか思い出して書いてるとワクワクした。怨霊がからまないホラー映画はもう少し増えても良いだろうし、そういった映画における先鋒として水霊は十分に役割を果たしています。メジャー的なスケール感もあるし。
 いいもの見せていただきました。悔しさは、あまりない。
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