WIRE06を振り返る

 テクノに興味無い方にも内容が伝わるような書き方をしてみよう。
 去年はクローク(荷物預かり所)でまごまごしているうちに壁の向こうから音が漏れ聞こえてきて「うお、早く早く」と焦ったのですが、今年は開場30分前に横浜アリーナへ到着し、グッズスルーで入場口へ並んだためスタートの瞬間フロアに立っている事ができました。
 先陣を切って登場するは、DJ TASAKAとKAGAMIによるファンク寄りユニットDISCO TWINSのDJプレイ。去年は和田アキ子の「男と女はハッシッシ」というブッ飛びリリックがカナリキテましたが、今年は「放射能エンジン始動!8番ゲートへ急げ!」とかいう水木一郎チックな曲でスタート。チルさんエンジンも温度上昇。他に印象に残ったのはDISCO TWINSオリジナル曲feat.吉川晃司ですか。カッコいいね。上々のスタートでした。
 続いて琉球ディスコLive。しっかりしたテクノサウンドに沖縄テイストを美しく融合させた双子ユニット。DISCO TWINSの反対サイドで演ってたため、人が少なくなったフロアでオキナワンテクノのハッピー感に包まれながら軽くトランス。シリアス寄りのテクノテクノした曲もあってイメージが少し変わりました。途中で抜けてひとまず休憩。
 コーラを飲みながらセカンドフロアへ。セカンドは入場制限がかかるのですが、開場前に出来上がった行列はすんごい長さ。メインから2時間遅れてスタートするセカンドフロアのトップは田中フミヤ:DJ。10代の頃からDJとして活躍し、レーベル主催者・クリエイターとしても日本テクノ界を牽引してきた偉大な番長です。在宅テクノっ子なチルさん、田中フミヤのプレイは初体験。ミックスCDは2枚持ってますが10年も前のもの。先入観なしで体感しようとしました。
 テンポ遅め、フロアを満たす音の数は少なめ。「淡々」という言葉が似合うじっくりじわじわな立ち上がり。ぬるま湯に浸かっていたチルさんを襲うミニマルの洗礼です。正直なところ序盤は「う〜ん、なるほど、むむむ」なんて感じていましたが、次第に持ち上がる快感。テクノミュージックって本来こういうものだよな、なんて思うようになりました。クラシックとかジャズとかロックとは全く別のルールによって構成された音楽。そんな(間違っているかもしれない)認識を得るとともに心地良さが増していきました。こういうDJってやってて楽しいんだろうな。
 フミヤの後に登場したAFRAさんバンドは聴かずに退避。沖縄そばで腹ごなししてからメインフロアへ移動、石野卓球:DJに備える事にしました。メインではベテラン?なミクスチャーバンド?NITZER EBBがLiveしてましたが、バンド臭さがちょっとダメでした。途中から観てそういう事を言うのは反則ですかね。卓球が出るメインフロアWEST Sideは客がギッシリ。卓球に声が届く距離で観たかったけど諦め、中間エリアの最前列に移動。
 粘ってたwNIZTER EBBが終わるとWEST SideのLive StageにダンスチームMEISAI登場。背後から放射状に発射されるレーザーが雰囲気出てます。わずか5分間のダンスで一気に会場がヒート。
 そして石野卓球スタート。直後にチルさんのまん前に音をロクに聞かないブッ飛び男子2名が割り込んできてどうしようもなくウザかったので、楽なエリアに移動してできるだけ音を聴く事にしました。卓球の次はEAST SideにおけるHARDFLOOR:Live。EASTのStage前で良ポジション(卓のほぼ正面2列目)を確保してから、卓球のプレイを堪能。割と聞き覚えのある曲が多くて「何だこの曲!?すげえええ」みたいな印象は無かったけどテクニックを発揮した時の凄みは感じました。最も遠い位置でも存分に楽しめました。
 そしてHARDFLOOR:Live。かつてピエール瀧が奇天烈と評したテクノ臭〜いコンビユニット。ベースマシンを駆使しまくりアシッドと呼ばれるジャンルを開拓した人たちです。実際のところアシッドなんて時代遅れもはなはだしいのです。しかし、HARDFLOORの作り出す世界、それが生むカッコ良さは流行り廃りのレベルじゃありませんでした。テクノのライブパフォーマンスならではの魔術感。オリジナリティを確立したアーティストの凄み。最高!と思う瞬間が何度も訪れました。踊るスペースなんて無かったですが、脳と心臓はとことん喜ばせていただきました。
 HARDFLOORの次はケン・イシイ:DJでしたが、かなり疲れたので退避。04の評判がかなり良かったので余裕があれば聴きたかった。水分補給してからクロークに行きカバンを受け取る。Tシャツを着替えると生き返ったような気分になる。
 セカンドフロアに移動してみると、まだまだ減ってない行列。ヤバっと思って並ぶ。行列はかなり長かったものの10分くらいで入場できそう。それにしても出口から出てくる客が「暑い〜」を連呼している。相当ヤバそうだ。お目当てのFERIX KROECHERはしっかりがっつり体感したかったアーティストのうちの一人。入場が早すぎて無駄に体力を使う事になるのを避けるため、行列から退避。KROECHERスタート時に丁度入場するくらいの時間まで小休止しました。この時既に足の裏がパンパンになってました。
 目論み通りFERIX KROECHERのDJプレイが始まる直前に入場できて安堵。ポジションも中央でKroecherさんへの愛が届きそうな位置。MIXIでこの人のプレイしている映像を見てめちゃめちゃ気に入ったのです。プレイスタート。初っ端からテンポ早い早い。ハードテクノに属する楽曲をビュンビュン投げてきます。変化の付け方もシンプルかつ豪快である意味想像どおりのアグレッシブさ。やっぱスゲエ!と思ったのも束の間、中盤以降は疲労との戦いでした。水分も補給できないしタオルは既にしっとり濡れてるし、フロアは湿気と熱気に満たされてます。
 それでも[あの時の動画]で聞き覚えのある曲が聴こえてくるとテンションめちゃアップ。“Don't Stop Pop that Pussy”のフレーズを、チルさんの耳が脳が心が期待する。でもなかなか来ない。「頼む!あの曲かけてくれ!」と祈りをこめ、ガチで合掌しながら踊りました。ちょっとした指揮者みたく手振りで音を感じるKroecherさんはイカしてます。自分との戦いを7勝8敗ペースで切り抜けながら待ち続け…確かに聴こえました「Don't〜」のフレーズ!この曲がKroecherにとってどれくらい意味のある曲かは分からないけど、とにかく期待感がビッグバン。ぽだぷしぽだぷしと歌いながら山場を乗り切りました。
 しかしその後にかかったグレートなリフ…[bone slippy]!気持ちよすぎです。あくまでもハードテクノなプレイングなのでメロディがかき消されるような感じもあってそこは笑えましたが、めちゃ盛り上がりました。その後はヘロヘロになりながらゴールイン。若くて青いプレイングかもしれないけどこれが彼のスタイルなんでしょうな。とにかく疲れた。
 続いて登場するはSecret Cinema:Live。この人の曲もかなーり好きだ。卓上に見えるmacのノートパソコン2台。ゴリゴリハードな曲に染まった体に心地良い、テンポ控え目のファンキィなテクノ。言葉では表しきれないけどHARDFLOORに匹敵する超イカしたテクノサウンドでした。Kroecherが単調すぎたと思えてしまうほどクセのあるテクノ。フミヤの時にも感じたテクノ再認識感を味わいました。終演後は「聞き逃さないで良かったー!」とつくづく思いました。
 セカンドを脱出してみるとTシャツどころか短パンまで汗でグッショリ。顔面までも脱力した状態でクロークへ行きカバンを受け取った。再びTシャツを替え、チキンカレーを食べた。水分も補給してメインフロアへ。
 世界最強のテクノDJ・JEFF MILLSがプレイ中。音を堪能しつつ好き勝手踊り狂おうと思いMillsさんから最も遠いエリアに行きました。昨日は音楽の才能って一体なんなの?と思わせるようなグルーヴ感の大渋滞と書きましたが、別の表現を探すと…脳の快感中枢を的確に撃ち抜く技術を持った変態シューターとでも言いましょうか。楽曲から他のDJには見られない独特のトーンを感じさせるのは、レコード3枚回しだからこそなのかな。世界を創る事の出来るDJってのはなかなかいないでしょう。
 Millsさんが大トリなので観客は当然のようにアンコール代わりの手拍子。Millsさんがレコードを掲げ、[おかわり]のスタートを示す。最初のおかわりはいきなり[Changes of Life]! やったなオイ! 聴けて幸せだなぁオイ! 最高だぜオイ! そんな気分を周囲と無言のうちに共感。疲れが吹き飛ぶというのは決して誇張では無い。アホみたいにジャンプしまくり。おかわりが終わってカバンを背負う。でもおかわりに備えてMillsさんが見える位置に移動しただけ。
 やっぱり来ました2度目のおかわり。疲れも痛みも眠気も消失した。踊る。跳ぶ。叫ぶ。レイブオ〜ン。3度目のおかわりのオープニング曲がすげーカッコ良かったなぁ。最後はゆっくりゆっくりフェードアウトで終了。モニタ内で笑顔を振りまくチア☆ガールさん。その手にある看板にはSEE YOU NEXT YEARの文字。WIRE06が終わった。