グエムル2度目

 ポン・ジュノ監督作品「グエムル -漢江の怪物-」をワーナーマイカル板橋のレイトショーで観てきました。折角なのでパンフも買いました。合わせて¥1800。
 ディーテイルに触れてますので一応隠しまーす。 1st鑑賞の感想はこちらです。
 2度目の鑑賞で気付いたのは「怪物」のタイトル直後、ソン・ガンホが居眠りしてる間に万引きしようとしてるちびっ子が「例の兄弟」だったという事ですね。
 こういうところに気付かないのはちょっと恥ずかしいですが、最初の鑑賞時にはメインキャストの登場を心待ちにしていたゆえ子供の顔を記憶できるほど注視してませんでした。悪い意味で集中してたかな。家無きブラザーズの兄は「殺人の追憶」のマネっこ少年ですな。
 怪物との1stバトルでは重そうな標識で戦うソン・ガンホですが、単に持ち上げて振り下ろすというならまだしも、コンテナとコンテナの間を標識がスススーと走っていくカットはちょっと違和感。終盤で標識の重みを解放する描写があるわけだから、その重みが残っている段階では[重くて重くて仕方ない]というテイで描写してほしかった。
 Re鑑賞では役者の演技面にできるだけ注目しようと思っていたのですが、合同葬での演技ではパク・ヘイルが良かったです。いいポジションを与えられたという部分もあるけど。号泣の瞬間の無様っぷりとか、兄への嫌悪感とか、体制への根っからの苛立ちとか。殺人の追憶とのギャップが凄いですね。
 孫娘役のコ・アソンは今作でデビュー。オールド・ボーイのカン・ヘジョンにも感じた事だけど(ペ・ドゥナも?)、チルさんの感覚で言えば決して美人ではない。今後輝かしいキャリアを重ねていくであろう予感を喚起するようなルックスではない。それでもこの映画の中盤以降においては物凄〜く光ってる。こういうカッコ良さって映画にとって大事だ。
 セオリーを裏切るシナリオゆえにストーリー展開もクセがあるのだけど、父親ピョン・ヒボンが憤死した直後にソン・ガンホが、父を捨てて逃げる事を選べずに拘留されてしまうところは妙な味がある。客観的に見れば、中盤の山場を越えたところで[パクファミリーの物理的な離散]を用意するのは勇気がいるだろう。
 離散してからの展開は本気でグレートだと思う。リレー走のように一家の悲願を繋いでいく三兄弟。疲労、携帯メール、突如現れる助っ人。
 1つだけ残念なのは、ソン・ガンホが手術室で普通にケイタイを携帯している事。医師団が気付かないようなところに携帯が入っていた、みたいな細かいフォローが欲しかったです。携帯がらみの描写では着信履歴関連にもちょっと違和感。
 ラストバトルのアクションの流れはやっぱり言うことなし。直前のカメラ構えて驚愕の表情を浮かべるデモ隊という描写はちょっと野暮ったいかな。ポカしちゃったパク・ヘイルは次の出演作で超カッコいい描写を見たいし、全編通してやや地味だったペ・ドゥナのズッコケっぷりも見たいなぁ。
 パンフレットにも書かれていたように、チルさんもオーラスの寂しい夕食シーンに孫娘が居てほしいなぁ…なんて一瞬感じましたが、そういう[救い]を用意してしまうと[生死を分けたのは運でした]という結論に至ってしまうわけで、やっぱりああいう不在感こそがあるべきラストシーンなんだろうと思います。
 ポン・ジュノ次回作はいつになるのか…この人の凄みは他の韓国人監督じゃ埋められない。参りました。