28週後...

 ファン・カルロス・フレスナディージョ監督作品「28 weeks later.../28週後...」を観ました。
 2002年ダニー・ボイル監督作品「28 days later.../28日後...」の続編です。前作は昏睡から目覚めた主人公が変わり果てた世界で守るべき存在と出会い、必死につむぎ出した希望を絶望で塗りつぶされていく物語でした。多分。
 “Rage”と呼ばれるウィルスが島国であるイギリスに蔓延し、血液を介する伝播によって感染した人々が暴力と破壊と惨殺を繰り返すようになる。動物愛護団体の暴走によって解放されたチンパンジーから最初の感染が始まる点が不条理でした。
 今作ですが。結果的にはブラボー&スタンディングオベーション級の素晴らしい出来栄えでした。さすがに5年の寝かし期間はダテじゃないです。
 監督のファン・カルロス・フレスナディージョさんはスペイン人監督。2001年に“10億分の1の男”でブレイクした映画監督。40歳。ホラー寄りの人ではありません。
 そんな監督がパニックテイストのホラー&ゾンビ映画を撮るんだから何かしら個性を感じたいところ。脚本担当はスペイン時代からのパートナー的存在のエンリケ・ロペス=ラビニュ。28日後の世界はイギリス人チームからスペイン人チームへ託されたわけです。それによって前作とは異なるテイストが発生するのは必然でしょう。
 以下ネタバレ含みます。

  • 「見やすくて分かりやすい映像」に向いた状況を選ばない。

 最も顕著だったのはこの部分。感染者が暴虐を振るうシーンはほとんど手持ちカメラで撮られているので行為の中身がよく分からない。ダニー・ボイルと違うアプローチで誤魔化しつつも行為の凄惨さを強調している。
 安全だったはずの施設の最深部で第二次感染が発生し、爆発的に感染者が増えていく。主要キャラクター達は軍人の構えるライフルのスコープをくぐり抜けながら隔離地域の外を目指すわけですが、日没から朝に至るまでのサバイバルなので暗がりのシーンがほとんど。
 限定された照明の下で繰り広げられる惨殺を、もう少し見やすい映像に仕上げてホラーファンを喜ばせてあげても良いんですが、リアリティと流れを大事にして安易な崩壊を選ばない。恐怖を引き立てるシチュエーションのためならストレートでシンプルな映像が犠牲になったとしても構わない、というディレクターとしての姿勢が強い。
 あげくの果てに。地下鉄の構内へ逃げ込み、完全に停電した地下構内をスナイパーライフルの暗視スコープを頼りにしながら進んでいくという究極の暗所ミッション。その状況に至る必然性をしっかりセッティングしつつ、実際に“使える”映像は正真正銘の赤外線越し。そこにはディレクターとしての意志が息づいている。
 映画ってそういう熱を込めないと意味ないでしょう。
 赤外線映像だと人間の瞳孔が異様な見え方をするわけで、感染者と正常な人間を区別する要素が失われるのも面白いです。

  • オープニング。

 真っ暗な建物内で食事。ディナータイムかと思わせつつ、屋外は鮮やかな晴天。美しい日光の下で全力疾走する感染者達が出現。彼らにそぐわない場所は無いんだ、という絶望の演出。次から次へと狂気に飲み込まれる同居人。

  • ヘリコプターのプロペラでゾンビをズッタズタに切り裂くという映像の現代的実現。

 GTA:San Andreasにてヘリコプターのプロペラがボンネット上の白バイ隊員をズタズタにするおもしろシーンがあるわけですが、それをボリュームアップさせた実写映像が見られます。

  • 「あと4分でナパーム弾の爆撃が始まる」「カウント60で感染者がそこまでやってくるぞ!」「60分後か?」「60秒後だ!」

 感染者からの逃亡という大枠ミッションに加え、軍による大規模な掃討作戦を切り抜けるというタイムリミット式ミッションが課せられる事で緊張感がリズミカルに発生。その辺は単純に面白い。

  • 大オチ

 笑いました。クスクスクスクス笑いを漏らしてしまいました。
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 バラバラな文章ですが褒めまくってます。次回作として文句なし。やっぱり才能ってのは嘘をつかないのかな。ジャンルなんて関係ない。根性があれば壁を超えられるんだ。きっと。
 ファン・カルロス・フレスナディージョ作品を勉強しなきゃですね。