007 skyfall

 『007 スカイフォール』を見ました。
 世界一有名なスパイアクションシリーズですが、好奇心を刺激された事がないのでほとんど見た事がないと思います。
スカイフォールの悪役は『ダークナイト』におけるジョーカーとほとんど同じ描き方をしてる」という情報を入手したので見てみました。
 今作の悪役を演じているのはハビエル・バルデム。『No country for old men/ノーカントリー』にて圧倒的な存在感の殺人鬼を演じた事で有名な人です。期待が膨らむじゃないですか!
 この映画ってストーリーに大した意味はないし、アクションは派手なら派手なほど良いし、様式美的なシリーズかなと思います。
 序盤は、抑えようとしていたハードディスクを盗まれ、それを奪い返そうとしてボンドさんが頑張ってる姿が描かれます。そのHDDに入っているのがなんのデータかも分からないのでドキドキが無い。執念深く追いかけ続ける映像も、土台が無いから緊張感が無いと言いますか。最後は『28日後...』のヒロインでお馴染みナオミハリスが敵ともみあうボンドを狙撃で誤射して敵を取り逃がす。アヴァンタイトル終了。仲間を撃ったショックしか伝わってこなくて、データの漏洩によって何が引き起こされるのか、それをどれほど恐れているのかが見えない。
 ボンドは列車の上から落下した先が川だったために一命を取り留めたものの、職場復帰までダラダラと過ごして酒と女に溺れる。MI6本部が爆破されたところでようやく復帰の意欲を見せる。失敗から復帰までにブランクがあることで「データを盗まれたところで別に深刻な問題にはならない」というように認識してしまうし、そうなると序盤のアクションってやっぱり無意味じゃんと感じる。
 データがボス悪役の手に渡ることで本部爆破につながったんでしょうけど(しっかり見てないからよくわかってない)、爆破されるまでデータ紛失の意味に気付いてなかったとすれば、それによってもたらされた仲間の死にもっと責任感を感じるべきだと思うのですが、復帰するボンドはいつもどおりのちょいワルおやじ的なニヒルを漂わせていて、バカじゃねえの?と思うわけです。
 アクション第二ステージは第一ステージと同じように、カギとなる人物を確保しようとするわけですが、これもよくわからないもたつきを見せてビルからの転落死を防げずに失敗。ボンドが何をしたかったのかいまいちわかりませんが、カッコいいと思わせるアクションが描きたかっただけだと思います。
 なんやかんやありましてボンドは悪役のハビエル・バルデムと対面。元はMI-6のエージェントだった男で、簡単に言うとかつて所属していた組織に復讐したいみたいです。
 色々あってハビエルさんを逮捕することに成功するも、ハビエルさんはまんまと逃走します。この「爆破テロで挑戦状→逮捕されるけどなんか余裕ぶってる悪役」という展開はダークナイト』そのまんまです。
 ダークナイトはそれなりに鮮やかな手法で留置所から逃げ出せたわけですが、なんとこの『スカイフォール』、どうやって逃走に成功したかを描いてません。目を離したスキに看守が死んでいてオリが開放されている。なんということでしょう! ダークナイトはおろか『羊たちの沈黙』でさえ、そこを描くことに力を入れていたのに。なんとも間抜けなセンスの脚本です。(※ハッキングで牢獄の電子ロックを解除したそうですw)
 逃げ出したハビエルさんはかつての上司であるMというお婆さんを殺害しようとしているのですが、婆さんは査問委員会にかけられている最中。ボンドから「ハビエル逃走したから婆さんも逃げろ」と言われるものの、プライドとメンツを理由に査問の場に居座ります。めんどくせえ。
 ハビエルさんは婆さんを殺すために2人の仲間を従えて委員会の議場へ向かうのですが、それなりに警備されているであろう場所へ向かうのに何の策もなく、超人的な拳銃のテクニックで警備員を次々と殺して突破する、というだけ。こんなストレートな手段で復讐心が満たされるならもっと早い段階で出来ただろ、と思うのですがよくわかりません。とにかくハビエルさんは馬鹿キャラに成り果てました。
 ボンドが駆けつけて婆さんの命は救われたのですが、ハビエルさんは仕留められず。ハビエルさんの目的が婆さんであることが分かったボンドはどう対応したのかというと「ど田舎の教会(※教会ではなくボンドさんの生家だそうです)で敵を迎え撃つ」という不可解な手を打ちます。教会には謎の爺さんがいて古臭いライフルをくれました。婆さんはガラス瓶を砕いてアナログな地雷を作ります。
 集中力が足りないからでしょうけど、この場所に来てショボい装備で敵を待つ意味が分かりません。伏線とかあったんでしょうか。もしかしたら過去のシリーズで印象的な場所だったりしますか?
 だとしても、1人の婆さんを守るのに適した場所ではないし、もっと安全な場所が他にあったはず。ボンドの強さを表現するために武器・火器で不利なシチュエーションを用意したんでしょうが、ナンセンスです。不利な状況を知恵で乗り越えるのはヒーローらしいふるまいですけど、あえて不利な状況を選ぶならそれなりに理由が必要でしょう。
 ハビエルさんは傭兵を従えて教会にやってきます。兵士を送り込んだり手榴弾をいくつも投げ込んで教会を炎上させて喜んでます。人格もC級だし、手口もC級。なんの魅力も感じません。こんな馬鹿キャラをジョーカーになぞらえるなんてもってのほか
 ボンドはガスボンベを利用して作った爆弾でハビエルさんを驚かせるのですが、自分で選んだ場所でそんなくだらない手を選ぶボンドも馬鹿っぽいし、その程度のリアクションも予想できず爆破に驚いてたじろぐハビエルさんもカッコ悪いし、その爆破でまんまと墜落する敵のヘリも馬鹿っぽいし、どれもこれもくだらねー!と思いました。ドン引きです
 ハビエルさんは目的の婆さんの元に辿り着いて「一発の弾丸で自分と婆さんを同時に殺す」という願望をさらけ出すのですが、そこにボンドが駆けつけて投げナイフでハビエルさんを仕留めました。このフィニッシュもあっけないしくだらない。死に様も普通
 なんなんでしょうかこの映画は! ディテールがことごとく自分にハマらないアクション映画でしたね。展開に意外性も無いし、演出に執念も感じないし、ボンドが光ってないし、悪役も光ってないし。おそらく色んな情報を見落としてるんでしょうけど、序盤の展開から不可解な事が多くて、そうなると物語に引き込まれないし、雑多な情報もどうでもよくなっちゃうし。
 派手に金かけてるけど全然面白くないという最悪なタイプの映画でした。でも色んなレビュー見ると別に失敗作扱いされてるわけじゃないんですね。Amazonの評価なんて平均4.0じゃないですか。でも☆1のレビュー見たら今回のブログと似たような事が書いてあって安心しました。こんな適当なシナリオに☆5とか付けるアホレビュアーにはなりたくない。興行収入的にヒットしたからって絶賛してりゃいいってもんじゃないんだよ。