凶悪

池袋シネマ・ロサで『凶悪』を見てきました。
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ノンフィクションをベースにしたフィクション。極悪非道の限りを尽くしたあげく逮捕されて高裁で死刑判決を受けた須藤(ピエール瀧)が、かつてのパートナーである不動産ブローカー木村(リリー・フランキー)を告発して復讐を果たそうとする物語。
会社に所属するジャーナリスト藤井(山田孝之)は死刑囚須藤からの手紙を受けて面会に向かう。須藤はまだ誰にも話していない3件の殺人事件を告白し、その全てが木村の主導で行われたものだと話す。
前半はジャーナリスト藤井の視点で描かれていきつつ、須藤の非道っぷりを強調するようにショッキングな場面がインサートされている。須藤のクズっぷりはかなりのもので、ここまでエグい描写を映画として成立させている作品は珍しい。
後半は藤井の視点が完全に消えて須藤物語と化すわけですが、それが始まるきっかけが斬新! ストーリー構成的にかなり冒険してて面白いです。須藤物語パートの中で、前半に織り込まれた断片的な非道エピソードの前後が描かれるあたり、すごく挑戦的な脚本ですね。
10代だった頃のチルは電気グルーヴの影響を受けまくっていたのでピエール瀧という人物に対しても一物あるのですが、凶悪に瀧を抜擢した人もかなり瀧に思い入れがあるのではないでしょうか。
この映画の主役はほとんどピエール瀧です。瀧の芝居には喜怒哀楽が全部入っちゃってます。役者の可能性をギリギリまで引き出すのが良い映画の条件だと思うのですが、よりによってピエール瀧の限界を探ろうとは、無茶にもほどがある!
しかし制作陣は瀧を信じ、瀧はその期待に答えました。そりゃあヘタな演技も多少はありますが、ものすごい芝居とものすごい面構えしてますよ。日本アカデミー賞助演男優賞ノミネートは間違いないでしょう。
キャストへの思い入れを差し引いても、『凶悪』は期待通りの出来でした。ノンフィクションをフィクションとして脚本化した手腕は見事!