Snow Piercer

2014/02/10、ユナイテッドシネマズとしまえんで『スノーピアサー』を見ました。 http://www.snowpiercer.jp/
韓国映画の俊才ポン・ジュノのハリウッド進出作。
温暖化を防ぐために地球全域に散布された化学物質が氷河期をもたらし、ごく一部の人類は永久的に地球を走り続ける高速列車スノーピアサーに逃げ込んだ。列車の最後尾に押し込められた人々は厳重な管理下に置かれ劣悪な環境で生きることを強いられていた・・・
面白かったです。
最下層民が反乱を起こすことは予告編を見た客も分かっています。映画本編も、序盤から重たい緊迫感が画面を支配しています。最初からクーデター直前の空気。
主人公が列車に乗った経緯、乗った直後のドラマなどは物語後半で語られます。時系列を入れ替えることでドラマ性を生み出しるんですね。
最下層民によるクーデターは、先頭車両にいるであろう管理責任者の元にたどり着くまで終わらない。まるでアクションゲームのステージを1つ1つクリアしていくかのような構造。
しかしスノーピアサーというゲームは難易度設定がおかしいんです!
クーデターを始めた直後はオラオラー!と勢いがある主人公たちも、管理者側の反発がスパッと消えて戸惑います。ファイティングポーズを解き、自分たちがどのようなシステムに組み込まれていたのかを把握していくうちに熱が冷めていく。
観客の予想と期待を裏切って、落胆や混乱を与えるポン・ジュノ脚本。観客はどこに向かえば良いのか分からなくなるのですが、物語の主人公は仲間と共にひたすら先頭車両を目指すしかないのです。
スノーピアサーという列車にポン・ジュノは現代世界をデフォルメして投影しており、メタファーに満ちた描写を楽しむには、緊張感が解けたことに対する不満を一旦忘れる必要があります。
チルは「これはコントだと思うことにしよう」と頭をスイッチしたらどんどん面白くなっていきました。
終盤になると緊張感が再び高まって、サスペンス性に満ちていくのですが、さすがはポン・ジュノ。なかなかのオチを用意しています。いくつもの伏線がまとまって、収束する。メジャーにふさわしい盛り上がりと、ラスト。
ハリウッドの王道的なテンションの作り方から脱却した上で、テーマ性作家性を盛り込みながらクライマックスを盛り上げる。正直なところ、「松本人志にもこれくらいの作品を撮ってほしいな」と思いました。
極度に拡大した貧富格差を描いたSFって今のハリウッドで歓迎される題材なんでしょうね。
スノーピアサーはもう少し規模の大きい視点で、今の人類間に存在する問題を「永久機関を積んだ列車」という閉鎖的空間に凝縮してしまった。その飛躍と、カタルシスが痛快。原作にどこまで沿ってるかは分からないけどポンジュノは容易く消化している。
キャストについて言うと、『グエムル 漢江の怪物』で引き裂かれた親娘が、今作では常に行動を共にするところに感動。娘さんを演じたコ・アソンはいい表情連発で、ダーティなメイクなのに輝いてた。ソンガンホは、ラストまで「引っ張る」。
さらに上のポジションを目指すために貪欲に創りました、という感じがしないところが面白いです。監督のポン・ジュノはプロデューサーのワインスタインと揉めて、本編の尺をかなりカットされたみたいなので、いつかディレクターズカットが公になった際はこの作品の印象も変わるかもしれない。
パク・チャヌクのハリウッドデビュー作『STALKER(イノセント・ガーデン)』よりも個性が光ってて印象に残る作品でした。