LIFE!

 2014/03/21、イオンシネマ板橋で『LIFE!』を見てきました。ベン・スティラー監督&主演。

 予告編を見て以来、もしかして大当たりなんじゃないか? 最近映画館で泣きまくりのヨシダがまたウルっちゃうんじゃないか? と期待をふくらませて見に行きました。

 コメディでありアドベンチャームービーなんだけど、複数提示された「なぜ?」を主人公が解き明かそうとする様はミステリ的でもある。

 色んな「なぜ?」が終盤まで保全されていて適度な牽引力につながっている。

○LIFE!誌最終号の表紙を飾る写真のネガはどこへ行った?

○そのネガには何が写っていたのか?

○そのネガにこめられたショーンの意図とは?

○ショーンは現在どこにいる?

○ショーンが次に撮影しようとしているものとは?

 などなど。

 牽引力を生む要因として主人公ウォルターの妄想シーンがある。ウォルターはアクション映画のスーパースターばりの派手な立ち回りが好み。大胆で豪胆なセリフや、小粋なジョークも好き。しかし全部妄想。

 予告編でも妄想シーンがたっぷり使われていますが、冒険の旅に出てしばらくすると、ウォルターの体験している現実が妄想に追いついていく。

 観客は妄想にふけって現実逃避するウォルターに愛着を抱いていくのだが、ウォルターが妄想する回数は減り、ウォルターは妄想する必要がなくなる。

  派手な妄想の方が牽引力は強いけど、妄想から抜けだしたウォルターの生きる様を見た観客は、彼のイキイキとした姿を見て想像力を働かせる。たとえ ば「ウォルターはなぜ生まれ変わることができたのか?」と。彼が映画の主人公だから? そんな結論で終わるのは寂しいですよね。

 エンドロールを見るまでベン・スティラーが監督しているとは知らなかったので、Music Video出身の若手監督かなと思っていた。なかなか大胆な描写が多くて面白かったです。

 以下、細かい感想を羅列。ネタバレ注意です。

 ヒロインの態度が煮え切らない。最後まで存在感なかった。主人公が彼女に心惹かれるきっかけはまったく描いてなかったけど流れ的に邪魔かな? きっかけは省略するにしても、キャラクターとしていまひとつ魅力が分からなかった。

 旅に出たウォルターが目的を果たせないまま一旦帰国するのがちょっと意外で面白かった。帰国しなかったら普通の冒険譚になってたかもしれない。

  FacebookでいうところのNice!のパロディとして「ウインクする」ボタンが出てくるんだけど、終盤になると「ウィンクを伏線に使ってくれよ!」ということばかり考えてました。オープニング、ネット経由で「ウインク」 することさえできなかったウォルターが、旅を経てどう変わったのかを示す絶好の伏線になったのに。

  コストカッターとして会社を乗っ取ったアダムスコットがヒールとして物足りない。出落ちレベルのおもしろ顔面が芝居を消してませんか? ウォルターは心の中でコストカット野郎のヒゲづらを批判しながら、終盤では自分らしいヒゲづらを獲得している展開がカッコ良かった。

  旅から戻って仕事を失ったウォルターが「憧れの女性に自分から話しかけて自分からデートに誘う」という行為を当たり前に実行しているラストシーン。その変 化はとても地味だけど感動的。ナレーション補強で感動を強化してもよかったんだろうけど、ベンスティラーはそうい う手法を一通りやりつくしてきてるんだろうなあ。

 あっさりしたラストに拍子抜けする人も多いと思うのですが、冒険と挑戦こそが人生なんだ!という嘘っぱちな結論に落ち着いていなかったのが印象的でした。

 期待してたような超感動作品ではなかったのは間違いない。けどそれはチルの勝手であって。北欧の大自然をまっすぐ進んでいくウォルターの姿は素晴らしいですよ。