WOOD JOB!
2014年5月16日、ユナイテッドシネマズ豊島園にて『WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜』を見ました。
コメディ職人・矢口史靖の監督作品ですね。矢口監督としては初の原作ものだそうです。
アイドルグループJuice=Juiceのメンバーblogに「ウッジョブ観に行くかも」的な発言があったので先んじて見ちゃおうと思いました。
主人公はとことん馬鹿な高校生・勇気。彼女にフラれて凹んだ直後、林業研修生募集パンフレットの表紙で微笑む長澤まさみに惚れて1ヶ月の研修、1年間の実地訓練生活へ飛び込みます。
序盤は馬鹿のアーキタイプをなぞるかのような行動を連発。
序盤は馬鹿のアーキタイプをなぞるかのような行動を連発。
馬鹿なりに前向きっていうならまだしも馬鹿でなおかつやる気が無いのでどうしても好感持てないキャラクターなんですよね。染谷将太の芝居もすげームカつくので、馬鹿が変化・成長していくという展開の前振りとしては成功してるのかもしれません。
いやでも「ここまで空気読めないやついるかよ」って冷めた気持ちの方が大きかったかな。
ど田舎描写として、駅の電車が6時間に1本しか来ないという笑いをはさんでいたのですが、ダイヤ表を写せばそれだけで「電車ほとんど来ない」という情報は伝わるのに、主人公に「6時間後ぉ!?」というリアクションを取らせていて、そのコメディロジックに違和感ありまくりでした。
研修期間数日で逃げ出そうとする主人公がヒロイン長澤まさみにたまたま出会い、駅まで送ってもらうものの思い返して寄宿舎に戻っていきます。
気持ちを入れ替えて勉強する姿が描かれていくのかと思ったら、そこはまったく描かずに研修終了。同期生が次々と脱落して辞めていく中、馬鹿主人公が1ヶ月間をどうやって乗り切れたのかが全く描かれてない。しいて言えば長澤まさみへの一方的な思いだけど、そこもいまいち強調しきれてない。
インターンとして参加する就職先が業界でもトップクラスの優良企業に決まる経緯も完全にスルー。
なぜ? がどんどん積み重なって、放置されたまま進んでいく。導入としてはずいぶん下手クソなシナリオだと思いました。原作通りなのか矢口理論に基づいたフリなのか。よくわかりません。
実地訓練が始まるとド田舎描写×伊藤英明演じるがさつマッチョキャラ・与喜の登場で牽引力がググッと強まります。
矢口監督作品ほとんど見たことないですけどね。
林業をモチーフにしたのは良かった!と思うんですが、人気作家の小説の映画化なのでそこは「さすが矢口監督!目の付け所がいいね!」って結論を出すのはちょっと躊躇しちゃうんだよな。
伊藤英明がしっかりチェーンソー使いこなして木を切り倒す映像とかは説得力があって、役者業の醍醐味みたいなのが感じられて良いです。そこは実写映画化の意味がある。
クライマックス、ウッジョブに携わる猛者どもがふんどし一丁で山頂を目指す中、実家からの電話でもたついた主人公が長澤まさみのバイクで山を登っていく姿は・・・見ててそんなに違和感なかったけど、冷静に考えるとそれまで大事にしてきた『神が宿る山』ロジックをぶち壊しにしてダメでしょ!と思います。
主人公とヒロインが共同作業することによって距離縮まるのはアリだとしても、そのきっかけは「実家からのどうでもいい電話」によってもたらされているし、「夜が明けるまでに山頂に行かなきゃ!」というサスペンス性を乗り越える手段としても薄っぺらくて・・・もうちょっと練り込めるでしょ。
山頂にのぼって巨木を切り倒し、男性器に似せた形状に削って、レールに乗せて滑らせ、ふもとにある女性器型オブジェに激突させる。これがクライマックスで描かれる祭りなんですが、主人公が足にからまった縄をほどけないまま男性器オブジェにまたがって滑り落ちるという笑いとアクションのピークがやってきます。
いくつかの伏線をからめてくるのは良いのですが、無事に着地した直後に主人公とヒロインのからみが皆無なのはどうなんでしょうね。
コマーシャルでは主人公がふんどし姿で巨木に乗って滑落している姿を見せちゃってて、最近の映画CMの節操の無さにウンザリしちゃいますね。チルはこの映画にさほど期待していなかったのでCMも目に入らなかったですけど。期待感を大きく持っている人ほどネタバレにガッカリすることになる。余談ですけど。
大祭が終わった後、主人公が実家に帰るために駅で別れるシーンはなかなかじんわり泣けちゃいました。エンドロール後にもちょっとした描写があるので最後まで見た方がいいかもです。
チルの中に残った違和感ばかりを書きなぐってしまいましたが、林業という業種が内包する「仕事はめちゃハードな肉体労働だけど、スロウライフ的な観点が不可欠」という特性はテーマとして斬新だったし、しっかり描けていたと思います。
ドラマ性の付与はもう少しうまく出来ただろ! と思うのですが、おそらくは原作の展開からどこまで逸脱できるかという点との妥協点だったのでしょう。
アイテムを使った伏線はところどころに配置されてうまく回収されてたと思います。
見終わった後は「いい映画見たな」と思えたので、割とオススメできますが、自分と同世代かそれ以上の男性が満足できるかというと難しいのではないでしょうか。それが正直なところです。
あと、タイトルは『ウッジョブ!』で良かったと思いますよ。サブタイトルが原作小説のタイトルなんですけど、覚えられねえわ。主人公にとってはどう見ても非日常だしね。
あと、タイトルは『ウッジョブ!』で良かったと思いますよ。サブタイトルが原作小説のタイトルなんですけど、覚えられねえわ。主人公にとってはどう見ても非日常だしね。