魔法☆男子チェリーズ第1話感想

 「テレビドラマ感想」というジャンルに手を出そうと思います。


 取り上げるドラマはテレビ東京

『魔法☆男子チェリーズ』

 原作ものではないオリジナル作品です。土曜深夜、『ゴッドタン』の後に放送されてます。


 主演はA.B.C-Zジャニーズ事務所の若手5人組。今作にはグループ全員が出演。ジャニーズでそういうドラマってなにげに珍しいですよね。


 監督の山本清史は映画を中心に活動してきた人で、特にホラー系作品に多く携わってきましたが、テレビドラマに進出してからは『のぞき屋』『新選組PEACE MAKER』など多様な世界観に挑戦。企画から脚本監督音楽編集までなんでもやっちゃう人です。今回は監督と編集を担当。


 さて、ドラマ本編の感想です。流れを追いながら感想をはさんでいきます。


 オープニング、一人の男子高校生が倉庫のような場所でシュプレヒコールを上げる群集に囲まれている。目の前には奇妙な髪型の男が不気味な笑みを浮かべている。高校生は状況を理解できず混乱する。


「俺が…魔法使いだって?」


 オープニング曲がかかり、クレーンを使って学校の校舎を捉えたダイナミックなショットと、群衆に囲まれながら踊るA.B.C-ZのMuxic Video風カットを交互に映す。クレーンからのカットはスローモーションなんですが逆再生。


 オープニングタイトルが表示された直後に「12時間前」の字幕。逆再生カットが「以後」であることを表現しており、主人公が群衆に囲まれていたシーンが観客と感覚を共有させるための時系列操作であることを意味しています。


 オープニング曲のクールさと、物語の導入部分がうまく融合していてめちゃめちゃカッコ良いです。ジャニーズ関連のドラマでよく見られるのが「なんとなーくドラマの空気に合った曲を作ってミスマッチを回避している」というパターンですが、今作は「それじゃ物足りないだろ」と、新しいことに挑戦しようとする意欲を感じました


 主人公・堂神哲(橋本良亮)は17歳の誕生日を迎えたばかりの童貞。必死になれる対象もない平凡な高校生だったが、友人と話していると唐突に相手の感情・思考が視覚化。接触した対象の思考を読み取るテレパシー能力の片鱗に触れ、困惑する。


 高校生活描写の中で、クラスメイトかつ幼なじみのヒロインに思いを寄せていること、兄が失踪したこと、女性の頭髪を切る通り魔が出没したこと、などの情報が伏線として設置されていきます。主人公とは別の場所で、4人の男=A.B.C-Zメンバーが新たなる魔法使い誕生を感知している描写。


 ヒロインと一緒に帰る主人公、別れた直後に悲鳴が聴こえてきて駆けつけるとヒロインが通り魔被害に合っている。2度目のテレパシー能力が発動してヒロインの怯える気持ちを読み取る。


 ここの流れはあまり上手くないなあと思いました。通り魔の話題の出し方がベタすぎるし、直後にド直球な方法で回収する流れは緊張感の作り方という意味で物足りない。


 通り魔被害に合う前後も、主人公ヒロインともに芝居上のアクションとリアクションにもうひとつリアリティが欲しかったです。通り魔に遭ったヒロインのリアクションはそれでいいのか、悲鳴を聴いた主人公の芝居の深み、自宅前で別れてヒロインを一人で帰らせる主人公、被害者らしい素振りが見えないヒロイン。もう少し精度上げられると思う。


 2度目の能力発動で、魔法使い集団に存在を知られた主人公。玄関先に飛んできた矢文で通り魔(演じるは3代目パークマンサー)の正体を知ることになる。吸盤式の矢が飛んできてもリアクションが薄い主人公に違和感あり。芝居全体からコメディ成分を少なめにしてシリアス寄りにする意識は感じるんだけど、リアリティに欠けるところがチラホラ。


 魔法使い集団に誘導され通り魔の元にたどり着く主人公。通り魔を追いかけて雑居ビルに追い込むも、通り魔は不可解なことを言い始め、気付けば群衆に囲まれる謎の空間DTフィールド(ネーミングの元ネタは言うまでもない)に放り込まれる。オープニングのシーンにつながってくる。


 DTフィールドは魔法使い同士が雌雄を決する場所であり、その決着はダンスバトルで決まるらしい。有無を言わせずに提示される設定が潔くて面白いです。


 戸惑う主人公の背後に現れたのはサイバーな装飾たっぷりのパーカー風ジャケットを身にまとった4人の男=チェリーズ! キレのあるパークマンサーのダンスに対し、大胆で豪快なブレイクダンスで圧倒してバトルに勝利!


 ダンスバトルで勝敗を決めるという「ワケのわからなさ」にこそ、ドラマの主演にジャニーズタレントを起用した意味があるし、そこで見せるダンスのカッコ良さが半端なものじゃないからこそ、ドラマとして成立しているのだと思います。企画として見事だな、意欲的なドラマだなと素直に思いました。


 30分枠の中で主人公の能力覚醒、事件が起こり、犯人にたどり着いて、バトル決着、という流れを詰め込むのは大変だったと思います。


 2話以降にどんな遊び方を取り入れるか、チェリーズのキャラクターをどこまで掘り下げられるか、そして「童貞喪失か魔法使いとしての使命か」にジレンマを覚える主人公がどんな成長を果たしていくのか、とても楽しみです。期待できますよこのドラマ!