観相師

 2014/07/04、シネマート新宿で『観相師』を見ました。かんそうし。The Face Reader。


 ソン・ガンホ主演の韓国映画です。ソン・ガンホ。丸いんだか四角いんだか、とにかくデカい顔を持つ韓国のトップ俳優ですね。


 彼の代表作を一本挙げるとすれば、連続殺人事件を描いたサスペンス巨編『殺人の追憶』ですね。まだ見ていない方、あなたは幸運です。既に見た方、あなたも幸運です。


 どう転んでもモテる男の役は出来ない人ですが、だからこそ男が惚れ込むんです。もちろん女性のハートだってくすぐります。どんな芝居もやりきってくれる、信頼のおける俳優です。





 ソン・ガンホが演じるのは、他人の顔を見て未来を予測する(超)能力を持つキム・ネギョン。義弟・息子と共にド田舎で怠惰な生活を送っていたものの、観相術の噂を聞きつけた女商人に招かれて都へ。最初は騙されて過酷な条件でこき使われるのですが、すぐに王宮にもその名が届き、権謀術数うずまく政治の世界に巻き込まれていきます。


 韓国史でも有名な事件を描いたこの作品。その背景に一人の観相師がいたというイマジネーションで映画を1本作ってしまうのが凄いですね。『信長のシェフ』みたいなものですかね。


 主人公はあらゆる人物の未来を見抜く目を持っているのですが、虎の相を持つ高官と、狼の相を持つ王の弟との間で運命を翻弄されていきます。


 登場人物の未来を見抜き、その宣告が実現する/現実になっていく展開は「伏線を張って回収する行為」を露骨にシナリオに盛り込んだもの。そのシンプルな大仕掛けを大胆に取り入れて壮大なドラマ性につなげていくスキの無さは流石韓国映画だな、と思います。


 展開の作り方や意外性の生み出し方など、勉強になるところが満載。


 メインから脇役にかけてどのキャラクターも濃厚かつ繊細な芝居を見せてくれるので見応えがあります。終盤にはきっちり泣かされました。


 しかし終わってみると後半の盛り上がりに欠けたかなーと。観相能力による未来視が展開に驚きを失わせている感じ。史実の映画化なので改変できる範囲も限られているし、物語の構造的に新鮮味がもう少し欲しかったです。


 クーデターを引き起こした最終的なトリガーが主人公の義弟の暴走で、そこに至るまでに緻密な伏線を張っているのですが、その引き金が引かれた時も「あららー、そこに行き着いちゃったかー」と、複数あるクライマックスのうちの1つが、残念な感じでした。主人公との関係が崩れてしまうことに対するチルの抵抗感だったのかもしれません。


 世界を驚かせてやる!という意欲に満ちた映画!・・・と断言するには色々と惜しい部分が目についた作品でした。もう少し具体的に指摘できたら良いんですけど、1ヶ月経って記憶が薄れて…