Guardians of the Garaxy

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーを観ました。2014/09/17、ユナイテッドシネマズとしまえんにて。IMAX3Dプラスウィンブルシート(音声に合わせて振動を発する座席)で合計2500円!

http://marvel-japan.jp/gog

群雄割拠のアメコミヒーロー映画戦線に新規参戦したこの作品は、いまや興業収入3億ドルを超えるスマッシュヒット。

アイアンマンが実写化した当時も原作コミック自体の人気はオワコン状態だったらしいのですが、本作の原作はさらに知名度が低いとか。

巨大なバジェットを注ぎ込めばそれなりに当たるのも確かですが、それだけじゃ7週連続TOP5入りはできない。果たしてこの作品を傑作SFアクションに至らしめた要因とは何なのか?

それこそが脚本と監督を務めたジェームズ・ガンなんですね。

ジェームズ・ガンは叩き上げの映画野郎で、かつてはアニメ映画『スクービードゥー』、ゾンビ映画『ドーンオブザデッド(ザックスナイダーのリメイク版)』の脚本を担当。後にクリーチャーパニック映画『スリザー』、ヴィジランテおじさん映画『スーパー!』を監督して評価を受けるも、興業的には低迷。

スーパー!は高校生がコスチュームを着てヴィジランティズムを振りかざす『キックアス』とほぼ同時期に公開された結果、ほぼインディーズ映画なために分の悪い戦いを強いられたのですが、内容のインパクトでは決して負けておらず、チルにとっても超お気に入りの作品です。 感想はこちら

そんな彼が、宇宙を舞台にしたSF超大作に抜擢されたあげく大成功を収めたとあっては観に行くしかありませんね。

ガーディアンズの面々を飾るのは元プロレスラーのバティスタ、木人の声を当ててるのがヴィン・ディーゼル、アライグマの声を当ててるのがブラッドレイ・クーパーという、ある意味スーパースターばかり。

でも主人公の地球人はまだ無名と言っていい俳優を使っていて 、新たなシリーズものの幕開けにふさわしいキャスティングをちゃんと理解してる。


さて、本編の感想です。まずオープニングは一人の少年(地球人)にフィーチャー。というより少年が持っているSONYのカセットテープ式ウォークマンを強調。

少年が、白血病と思われる母親と死別する瞬間を描いているのですが、この少年の芝居が適格で早くも泣きそうになりました。(やっぱ子供の演出うまいんだなー。『Hesher(メタルヘッド)』でもうまかったもんなー、とスペンサーサッサー監督作品と混同してしまったという余談)

母の死を受け入れられずに病院を飛び出したところ、U.F.O.にアブダクトされてしまう少年。次のシーンは2x年後。唐突だけど無駄がなくてテンポ良好。

荒れ果てた星に降り立つ男。かつて文明が存在していたと思われる荒野を進み、遺跡の中へ。呼吸ができると分かると、宇宙用マスクを"解除して"素顔を露出。そしてウォークマンを取り出してヘッドホン装着。オープニングの少年がこんなGuyになりました、という表現。

それと同時に、荒涼とした惑星で(観客にとっては)未知の生物に囲まれていても70年代ポップスの響きに体を揺らし続ける余裕っぷりに、タフな人間性と数々の修羅場をくぐってきた過去を感じさせるのです。こういった表現の自然さを見るに、やっぱりジェームズ・ガンは一級の映画作家ですよ。

主人公ピーター"スターロード"クイルという男が肌身離さず大事にしているウォークマンは、前時代的でありながらクールな「ガジェット」であり、全編に渡って物語的なトリガーとして効いています。

そして驚くべきは、斬新でインパクトのあるSFガジェットも次々と登場する点。そのガジェットがフレッシュなアクションと展開を生み出し、SF/スペースオペラならではの面白さにつながっている。コミック原作と映画版でどれほどアイディアを共有しているのか分かりませんが、とにかく豊かな発想力に感動しっぱなしでした。

さらにはクイルと出会う強烈な共闘者たちのキャラクターがド派手。アライグマと木人の超凸凹タッグ、緑色の女キリングマシーン、全身タトゥーの猪突猛進馬鹿。誰ひとりとして"ガーディアンズ"らしい資質を持たない利己主義者ばかり。チームとしてまとめあげる大変さ以上に、映画として筋道をつける難しさを感じました。

ガジェットを使った活きの良いアクション、その中で表現されるキャラクター。三要素が有機的に機能する様を見ていると、クライマックスを見るまでもなく理想的なSF映画だと結論づけたくなります。ホント、面白いですよ。

劇中のキャラクターたちが躍起になって追い求める"オーブ"、このキーアイテムの位置がドラマを形成していきます。

冒頭で主人公が手に入れるこのオーブを手放す事になる展開、これがまた最高なんですよ! あらゆるアクション(行動)の背景にキャラクターたちのキャラクター(人間性)が投影されている。だからこそ観る者の心を熱くさせるし、テクニカルなんです。

このアクションに基づく信念は最後まで徹底されています。やっぱりジェームズ・ガンは一級の映画作家ですよ(2回目)。

お互いに武器を向けて殺しあった5人が、転機を経て結び付き、共に戦う事を選ぶ。その描き方も丁寧で十分な誠意を感じます。凡庸な脚本家にこの映画は書き得ないでしょう。

そしてクライマックス、細かい"外し"で笑いをとって密度の濃い展開を生み出してきたジェームズ・ガンが重ね続けてきた伏線を利用した"大外し"で観客の度肝を抜きます! この大外しが無かったらハリウッドにありがちなSF大作アクションの域を越えてなかったでしょう。

その超展開は、端的な斬新さとキャラクター描写、そしてジェームズガンの作家性や人間性にも及ぶような芯の通ったものだからこそ痛快なんですね。だから、「よくあるSFっぽくなってきたな…」と思ったらオチを待ってください。

大外しからのー? グイングイン胸を揺さぶる別の伏線回収! 降涙確率極めて高し! ジェームズガンは"外す"とか"ベタ"とかそういう領域の作家じゃないのかもしれない。正しい映画がやるべきことを追究してるだけなのかもしれない。とにかく鮮やかなクライマックスに脱力感さえ覚えました。

このレビューを書いてるうちに、やっぱりこの映画は最高なんだな! と実感できました。そしてやっぱりジェームズ・ガンは一級の映画作家だな、と(3回目)。

ガンだけでなく、俳優陣も素晴らしいですよ。主人公を演じたクリス・プラットはイケメンすぎず、コメディ芝居もぴったりフィットしてて、スケール感もある逸材です。

姿はまったく映らないブラッドレイ・クーパーとヴィン・ディーゼルも、らしさと挑戦が同居する良いボイスアクトっぷり。ゾーイ・サルダナバティスタはアクション頑張ってるし、表現としても新境地拓いてる。

音楽は歌詞が場面にうまくマッチしているらしく、そこを理解できるとたまらないらしいのですが、曲のノリだけでも問題なし! 「ウガチャカウガウガ♪」に理屈なんて要らない!

予備知識ゼロで楽しめるスペースアドベンチャーコメディ巨編! これぞ大作のあるべき姿です。シリアスに寄りすぎたMARVEL映画の反動ともいえるコメディ要素の多さもあるし、とにかく上質な映画です。今年のベスト級! ご覧あれ!