ハナ〜奇跡の46日間

ハナ〜奇跡の46日間を見ました。DVDレンタルで。

韓国のスポーツノンフィクション映画です。1991年日本で行われた世界選手権に韓国と北朝鮮の卓球代表が合同で「チームコリア」として出場した実話を映画化。


ハ・ジウォン演じる韓国女子代表エースと、ペ・ドゥナ演じる北朝鮮女子代表エースが、バッチバチのライバル関係からかけがえのない親友となるまでの46日を描いています。


DVDの品質のせいかもですが、画面から伝わってくる印象が安っぽかったです。ドラマみたい。前半についてはカメラワーク的にも異常な情念を感じることはなく、肩の力を抜きながら見れました。


脚本自体はしっかりしてると思います。ノンフィクションというのを念頭に置いても、盛り上げていくための土台作りが丁寧。意外性とか要らないんだよ!w


かといって、こういうシナリオを王道という言葉で片付けるのも雑じゃないかなーと思うのです。こういうのを当たり前のように書ける人間がそうそう転がってるとも思えないし、日本には存在すらしていないんじゃないでしょうか。


ペ・ドゥナが演じているのは北朝鮮代表なのでチャラい空気皆無! ストイックでクールなたたずまいを徹底しているのですが、対するハ・ジウォンもなかなかの真面目ちゃん。ライバルらしいライバルです。


ハ・ジウォンさんのwikipediaを見たところ、彼女の出演した映画は一本も見てませんでした。お恥ずかしい! 「この女優さん追いかけてみよう!」と思うほどの感動は得られなかったのですが、しかしそれでも彼女を絶賛したい理由がありまして、それは


野暮ったいメイクと髪型


なのです。1991年当時の女性の雰囲気を再現しようとする。そんなの映画では当たり前なんですけど、それが出来ない中途半端な作品がいかに多いことか!!


現代の感性と相容れないような太い眉、ダサい髪。それを見た観客の中には瞬間的に違和感が生じます。


そんな些細な感情に考慮してなのか、現代人が過去にタイムスリップしたかのようなメイクでしれっと映画出演してカッコがついてると思ってるすっとぼけ役者ども!


本当の感動はその違和感を乗り越えた先にあるんだよ! それを演技力によって喚起するのが俳優業の意義なの!


この映画は、そういった俳優の存在意義に対する認識を改めて再確認させてくれましたね。ペ・ドゥナはそんなに眉毛ボーンじゃなかったけど。


そんなライバル2人の他、両国の女子チームにいる若手選手だったり、男子チームの面々だったり、監督コーチなどなど。しっかりキャラの立った登場人物がクライマックスに向けて感動を構築していきます。


最初はちぐはぐで対立しまくりだった両国代表たちが次第に打ち解けて1つの民族としてのアイデンティティを取り戻す。朝鮮民族にとってはこの上なくアガるシチュエーションでしょう。


韓国女子チームのお調子者が北朝鮮男子チームのイケメンに一目惚れして猛攻を仕掛けるくだりなどにコメディ要素の強さも感じさせるのですが、ハ・ジウォンペ・ドゥナのライバル関係はストイックに熱く描いています。統一チームの中でダブルスを組む流れもしっかりじっくり。


遠征初の外出許可日にハメを外した選手たちは北朝鮮のお目付け役の怒りに触れて合同チーム解散の危機に。やっと1つになれた兄弟・姉妹が離れ離れになってしまう。ベタすぎるけど熱い展開!なんせ事実ですから!


北朝鮮組を失った韓国代表は日本チームとの試合にも苦戦。なんとか勝利するも怪我人が出てピーンチ!


勝戦へ向かうバスに乗る寸前、ハ・ジウォンが動いた! 豪雨を全身に浴びながら、ホテルの部屋で待機しているペ・ドゥナ北朝鮮組に向かって叫ぶ! 「監督!チームコリアを率いてください! リ・プニ(ペ・ドゥナの役名)! 私はあなたと一緒に戦いたいの!(以下略)」


それを聞いたチームの総監督(北朝鮮側)は党本部の命令に背き、北朝鮮選手たちに「何をしてる 決勝戦に行くぞ!」と号令! ホテル前で正座していた韓国チームの元に駆け寄る北朝鮮選手たち! 抱き合って歓喜するチームコリア!


こんなの見せられたら大号泣ですよ。


雨の中の正座とか誇張=ケレン味も足されてるんでしょうけど、それによって「それでもクールなペ・ドゥナのキャラクター」という意味のある描写になってるんですよね。


女子代表決勝戦は卓球大国中国との対戦。オープニングで韓国エースのハ・ジウォンが中国エースに負けてるのもフリとして効いてます。


正直この映画の卓球シーンはアクションとしてもドラマとしてもやっつけ感があって若干弛緩しているのですが、決勝戦団体戦はしっかり描いてます。勝敗を分けるロジックこそ曖昧ですが、撮り方はしっかり情感こもっててナイス。芝居も素晴らしい。


結果だけ書くとチームコリアが中国を破って優勝します。まあそこは史実なんでイジりようが無いんですが。タメの付け方も見事で、スポーツドラマとしてのクライマックスにちゃんと緊張を生んでます。


勝利を決めた瞬間にライバルだった2人が見せる演技の壮絶さにビックリして。役者魂なる曖昧なものの存在をしっかりと感じさせてくれる凄い演技でした。この場面は全ての出演者、エキストラが大喜び。感動を空虚なものにしないための気配りもちゃんと出来てます。


主演の他には、北朝鮮チームの若手選手を演じてるハン・イェリさんに心打たれましたね。コリアンらしい顔だちで、目は一重だし美人とは言いがたい。でも、そんな彼女が見せる女優魂は美しいの一言!


勝戦の第四試合で1セットを取った際に彼女が言う「プニ同士とジョンファ同士が中国を破るのを見たいんです」というセリフは反則レベルの熱さ! 負けられないプレッシャーの中で見事に勝利して先輩に全てを託した瞬間の大喜び芝居も最高ですよ。


熱戦を制して中国を破ったチームコリアがそれぞれの国へ帰る場面。当たり前のように大号泣しながら見てたんですけど、クールさを取り戻していたかに見えたペ・ドゥナが、ハ・ジウォンの行動を見て一気に顔をクシャクシャにする瞬間に身震いしました。一瞬の演技に垣間見えるペ・ドゥナの綿密な演技プラン。演出だとすればこの監督すごすぎ。


決めるところをしっかり決めるところが韓国映画を信頼できるゆえんだし、そこに役者個人の強い意志が加わってとても感動的なドラマになっています。世界を股にかけて活躍するペ・ドゥナという女優の凄みを感じるのにもピッタリな直球ノンフィクション。オススメでーす!!!