チャールズ・ウォードの奇怪な事件

 ラヴクラフト全集2に収められた長編作品。1928年に書かれた外国文学というだけでもかなり重く、読みづらいのですが(個人的修練不足ゆえです)、これまた無骨な構成の作品なので完読に一苦労。
 チャールズ・ウォードという青年が収容されていた病院から忽然と姿を消したシーンから始まり、なにゆえその結末に至ったか、それまでの経緯がじっくりこってり語られていく。
 チャールズは約150年前の自分の先祖に当たる人物が公的文書から存在を抹消されている点に疑問を抱き、執着していく。その執着は彼を狂気に駆り立てる。
 膨大な量の情報を読者に与えておいて、最後の最後で臨場感を感じさせる恐怖描写を病的なテンションで並べつつ真実をつまびらかにする、というのがラヴクラフト流なのかもしれない。
 ラストの締め方に物凄く驚いてsugeeeeeeと感じたということは、多分この作品を最後まで読みきった事が無かったんだろうと思います。少なくとも中学生の頃のチルさんにこの長編はキツい。
 しかしラヴクラフトにとって稀少ともいえる長編作品は、まさしく病的な情熱に満ちた素晴らしいホラー作品である。勉強になりました。

 ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))