a Trick

 ↑の文中で「新しいセンスを否定する嗅覚は間違いだ」なんて事を唐突気味に書いた理由というのがあって、以前私はmixiという場所でこういう質問をしたんですね。

  • あるキャラクターが、別のキャラクターに言われた言葉を思い返し、反芻する
  • という描写をする際、ナレーション的にセリフの音声をかぶせたり、言われた時の映像をそのままカットインしてリピートしたり、モノクロにしてリピートする…のが定番かと思うのですが、
  • セリフを字幕・テロップでツラツラーっと映像に載せることによって「反芻」している事を表現する、という演出が施された映像
  • をご覧になった事がある方、私に教えてください。

 と、軽い疑問を日記形式でアップしたんですね。
 要するに私にとっては「お、面白い遊び方思い付いたぞ」と感じた技法であるわけで、もしこの手法がメジャー作品で既に行われていたらイヤだなぁと思ったんですね。
 するとしばらく経った頃に見知らぬ方からのコメントレスが付いていて

  • 私の場合ですが余計な小細工は一切使わず、
  • あるキャラクターが、別のキャラクターに言われた言葉を思い返し、反芻する場合は
  • 別のキャラクターがそのセリフをそのまま喋る
  • というごくシンプルな方法を取ります。
  • 余計な小細工はあざとく見えてクドいです。観客はバカじゃありません。

 と書いてありました。
 ハッキリ言って、この人のこの反応については色んな意味で納得しかねるのですよ。私も「納得しかねますなぁ」というスタンスをレスとして書いておきましたけどね。やんわり。その時の違和感を未だに引きずっていたため、↑のような事を書いてしまったのです。
 「ごくシンプルな方法」を当たり前のようになぞってたら刺激的な映像なんていつまで経っても創れないでしょう。新しい表現があざといとかクドいとか、それを決めるのは観客一人一人の感性であるべきだし。クリエイターがそんな事を恐れてどうするんですか。
 私がこの手法に込めた意味とその手法によって醸し出したい空気については明記しなかったですから、mixi上の日記を読む限りにおいては「ミスマッチか否か」を判断する材料が足らなかったであろうとは思います。少ないヒントで答えを無理やり出させようとしたような意地悪さを自分の中に感じなくもない。
 しかし、だからこそ「おまえの発想は所詮余計な小細工である」と判断されたのが解せないんですよ。私は拡大解釈してますかね。していないはずです。
 観客はバカじゃありません。
 …どういう意味?
 この程度の小細工が通用するほど観客は馬鹿じゃない、って事? そうとしか読めない。
 私は「この演出イカしてない?」という意味でmixi日記をアップしたわけではない。たった1ピースの演出を提示して、シチュエーションも無いし反芻すべき言葉さえも無いのに良し悪しが分かるはずもない。ただ、カブっていないかを知りたかっただけです。
 その演出が有意義であるかどうかは、実際に創った映画を観て判断してもらう以外にないし。じゃあさっさと創れってハナシですけど。
 新しい事をやろうとする意思そのものを否定されたみたいでね。なんだか苦しい気分にさせられたんですよ。世界中で新進気鋭の映画作家達が固い意思を持って新しい表現を模索してるんだから。
 たかが、セリフの反復・反芻描写。だけど、その瞬間を刺激的な形で描こうとしたって良いはずですよ。そこに意図があるなら尚更ね。