Berryz工房vsBerryz工房

 18日・19日と劇団ゲキハロ第五回公演「Berryz工房vsBerryz工房」を観てきました。
 ネタバレ全開で感想です。箇条書きでダラーッと。

  • 芝居の意義

 芝居・舞台をやる意義とは何なのか。それはすなわち、「演じる事の本質への回答」であると思うわけです。それこそが全ての芝居に共通したテーマではないかと思います。
 今回の芝居でBerryz工房7人は2つのキャラクターを演じるという課題に挑んだといえます。1つの芝居の中で絶えず入れ替わるパーソナリティを演じる。これは一種のハードルであることは間違いありません。
 演じた役自体は「アイドルグループBerryS工房のメンバー」と、「BerryS工房メンバーに似せて作られたロボット」の2つだったので、役作りに当たっての難易度は高くなかったとは思いますが、それをチェンジする部分では苦労したであろうと思います。
 18日の公演で、ロボットへのチェンジ直後岡田マネージャーへの毒舌シーンで思わず笑ってしまった夏焼雅さんが印象的でした。(19日の公演ではしっかり修正してました。)

  • 伏線の回収

 戯曲全体に顕著だった傾向は、てんこ盛りの伏線と、その回収へのこだわり。開演直後からハイペースで伏線を張っていくので、つかみが弱い・テンポが遅いという印象を抱いたものの、伏線を伏線であると意識させないだけの丁寧さがあるところは見事。
 伏線を回収する、その瞬間生まれる面白みは確かに納得できるものの、それによって描かれる展開そのものに爆発的な面白さが欠けている面もあったように思います。もう少し数を減らしてキレを重視する、あるいは全体の展開自体にダイナミックさがあっても良かったかな。

 ゲキハロの第1回第3回でやや損なポジションだった嗣永桃子さん。今回は主役とも言えるポジションでした。能力の割にはもったいない役回りだった嗣永さんに主役を張ってもらいたかったので、その点は嬉しい気もします。
 しかし第1回第3回公演における主役ほど難しい役では無かったように思います。演じるに当たってのプレッシャーはそれほど大きくなかったでしょう。嗣永さんならもっと難しい役でもイケるはずです。
 それでいて「今回の役を目一杯演じている」という印象も受けませんでした。キャラクターが抱えるストーリーを活かせば、もっと感動的な演技が出来ていても良かった。嗣永さんへの期待がやや大きすぎたのかもしれません。公演を重ねる毎にレベルアップしてほしいものです。

 須藤さん大好きっ子のチルさん的に、今回の須藤さんは完璧です。表情の精度が誰よりも素晴らしいです。笑顔、真顔、哀しげな表情、嬉しそうな表情。ライブ場面での表情にも全くスキがありません。
 さらに笑いを生むべき場面でのセリフのトーンが絶妙です。ツボります。

 作・演出・出演したのは楠本柊生元帥。この方がどこまで主導権を握ってこの戯曲を書いたのかは分かりませんが、Berryz工房への愛情が全体に散りばめられた作品であるのは間違いないと思います。
 嗣永さんが熊井友理奈さんを呼ぶ際の「くまいちょー」という愛称をシナリオに盛り込んで確実に笑いを生み出していたり、須藤茉麻のお母さんキャラ・食いしん坊キャラ、夏焼雅さんの洋服好きキャラまでもが組み込まれている点はBerryzファン垂涎。
 さらにはライブシーンで披露される数々の楽曲をストーリーに融合させていくところは嬉しい気遣い。ギャグ100回分愛してください直前のフリ、Hello!のテーマのテーマ性、Happy!Stand upでロボットダンスを取り入れる、など。
 終盤における「BE」は原曲の段階でロボットの声っぽいエフェクトがかかるフレーズがあるんですが、その部分がまるでゲキハロの伏線になっていたかのようで、とても感動的でした。あれは見事です。

  • プロレスシーン

 かつてプヲタだったチルさんなので、Berryz以外の出演者によるプロレスシーンのゆるさが気になりました。コブラツイストのフォームはとても綺麗ですが、ラリアットはどう見ても胸にヒットしているし、アトミックドロップのバンプはダメージが分かりにくいし、ハーフボストンクラブはまるで整体です。
 しかしそれらの技をBerryzメンバーが繰り出すのにはとても萌えました。熊井さんのチョークスリーパー菅谷梨沙子さんのパロ・スペシャル。後者に関してはパロ・スペシャルというよりサーフボード・ストレッチですが、実際にパロ・スペシャルをやるには受け手の清水佐紀さんとの体格差が大きすぎて無理でしょうw
 他に二人が繰り出した技は、エルボースマッシュ(実質エルボースタンプ)、目潰し(サミング)、(エア)凶器攻撃でした。

  • ロボットボケ

 夏焼さんが「どろぼー!」と言って清水さんに突撃する瞬間がとても可愛いです。徳永千奈美さんが「驚いたな。人並みの感情を持っているのか」と言う瞬間の低いトーンが面白いです。須藤さん菅谷さん嗣永さんの「はいそこ」ユニゾンが面白いです。

  • 総評

 見ればあなたもBerryz工房が好きになる! …と適当に書いてみたものの、素のキャラクターに近いお芝居だったので、本当にBerryz工房の事が好きになれる作品かもしれないなぁ。とにかく良いお芝居でしたよ。もっと観たかったなー