数奇にして模型

　森博嗣「数奇にして模型」を読了。ふむふむ。
　構図をシンプルなミステリィに近づけた？　原点回帰？　序盤はそんな印象。
　中盤以降は普通にハラハラ。波のある展開に触れ「夏のレプリカ」を越える緊張感を覚える。
　しかし萌絵の危険な単独行動連発にはちょっと食傷気味。その危険性によって物語を推し進めようとする作者の意図が見えざるを得ない。そして萌絵が単独行動に踏み切る瞬間を犀川が都合良く目撃しすぎな感もある。
　でも面白かったです。シリーズ9作目にして初めて「読みながらなんとなく犯人分かってた」例となりました。
　でもキャラクターのウソによって転がされる読者、である自分を自覚しました。
　そういえばチルさんが過去に生み出したフィクションの中にウソを付いたキャラクターは居なかったような気がする。そう考えると序の口だな自分は。
＞寺林高司の身の上に降りかかった災難こそ、この特記すべき事件の始まりだった。
　なるほどねぇ。