District 9

 ニール・ブロムカンプ作品「第9地区/District 9」を観ました。ネタバレ注意。
 簡単に言うととんでもない映画でした。単純に、目が離せない。グロが嫌いじゃない人、手持ちカメラに酔わない人であれば絶対に観ておいた方がいいです。
 1982年、南アフリカヨハネスブルグ上空に地球外生命体の巨大UFOが漂流・座礁。船内にいた大量のエイリアンは飢餓状態でヘロヘロ。政府が用意した地上の難民キャンプにエイリアンを隔離することにした。
 エイリアンと人類の共存生活は28年の歳月を経て徐々に崩壊、第9地区の治安は低下する一方。政府の依頼により民間商社MNUがエイリアンの大規模な移住計画を実行する事となった。

  • MNUの移住計画責任者ヴィカス。いかにも頼りなげなリーマン。セリフの節々に雑魚キャラ感を漂わせる。少なくとも前半で死ぬと思った。
  • 前半のインタビュー集でヴィカスが物語の中心である事がわかる。それでもなお、雑魚キャラ的な軽薄さを発散し続けている。
  • 謎の液体を浴びたら自分自身がエイリアンになってしまった。おそらくこの展開こそがB級映画らしい部分であり、シャープな独創性の結果でもあるのだろう。
  • 展開が読めなかった部分として、ヴィカスが心臓をエグられようとしているシーンで生き延びる可能性を予感できなかった点がある。まぁ、先を読もうとする努力がアホらしいほど濃密な展開なわけですが。
  • メスを片手にラボから脱走するなんて、ロボトミー寸前で脱走した「グエムル」とそっくりである。影響を受けているとは言いませんが。
  • モンスター/異形の者として忌み嫌われる存在が繰り広げる逃走劇。組織を相手に立ち向かうちっぽけな存在…グエムルっぽいなー。展開の巧妙さはグエムルの方が色々と上だと思う。作品のクオリティは別として。
  • 傭兵隊が使っているライフルをMW2の武器に当てはめてちょっぴりワーキャー。バレッタ50に見えたのはNTW-20というアフリカのメーカーが製造したアンチ・マテリアル・ライフルだそうです。この銃は攻殻機動隊でも登場したそうな(パンフレット情報)。
  • 孤独なヴィカスに警戒心を抱かないチビエイリアンがやたら可愛い。
  • エイリアン兵器を扱えるのはエイリアンのみ、という設定が憎い。その能力を欲しがるギャングの王というキャラもヨハネスブルグらしい味がある。
  • そのエイリアン兵器を使えるにも関わらず研究所に行くための武器としてAK-47をチョイスするヴィカス。入手する過程にひとひねり加えていて、それがハードコアな描写を生む。
  • MNUとエイリアンとギャングと主人公。各勢力が最後までカオスな争いを続けるところが良い。途中でおいてけぼり食らう連中がいてもおかしくないんだけど。
  • ラストカットがCG全開のエビってとことが面白い。どことなく可愛らしいフォルムで涙を誘う。

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 とまあ、牽引力がありまくりの展開に脱帽。ほとんどセットでの撮影だろうからどちらかといえば低予算なんでしょうけど。
 主人公ヴィカスは本職が南アフリカの売れっ子テレビプロデューサー。なんじゃそら。なんであそこまで惹きつける演技が出来るんだ。
 いやー凄い。