ハイテンション

(ネタバレ注意です。)
フランス映画『ハイテンション』を見ました。2ちゃんねるモ娘(狼)に立ってた「シリアルキラーものの映画教えて」みたいなスレにタイトルが挙がっていたので見てみたくなりました。
この映画の殺人鬼がシリアルキラーというカテゴリに入るのかどうか。よくわかりませんが。
主人公は女子大学生で、同級生(♀)の実家に泊まりに来ます。場所はど田舎。畑に囲まれた一軒家。そこに住むのは同級生の両親と幼い弟。
ホストが寝静まった頃、主人公がゲストルームでオナニーにふけっていると家に何者かが訪ねてくる。父親が出迎えると訪問者は突然父親を刃物で突き刺す。瀕死の父親の頭部に戸棚を激突させて首ごと吹き飛ばす訪問者。
虐殺の後で訪問者は主人公の同級生を拉致してバンに載せて連れ去ろうとする。主人公はバンに密かに同乗して救出のチャンスを伺うのだが・・・
「僻地に宿泊したら殺人鬼に襲われた」という展開にどことなく『かまいたちの夜』(サバイバルゲーム篇)を思い出したのですが、連れ去られてそれを追跡する展開は新しかったですね。気付かれないように追いかけながら救出を目論む。
この展開は、主人公が解離性障害(二重人格)であるというオチがあるゆえに生まれる面白さなんでしょうね。「殺人鬼が運転するバンの後部に同乗してても気付かれない」というのは通常じゃありえないんですが、解離性障害というネタがあるからこそ押し通せるスリルなんですよね。
殺人鬼と必死に戦っていたつもりの主人公だったのですが、同級生の家族を皆殺しにしたのも、同級生を拉致して連れ去ろうとしたのも全部自分だったと。映画のほとんどは「殺人鬼と遭遇したけど必死に切り抜けた」妄想で構成されてるわけです。
二重人格ネタなんていまさら新鮮味なんて無いわけで、そのネタのせいでラスト10分にガッカリする人がいるとしても、そこに至るまでの緊張感(ハイなテンション)をキープできるのであれば堂々と取り入れる。このスタンスは個人的に好きです。緊張感・恐怖感はものすごく張り詰めてます。
「先にオチが分かっちゃったよー」とか言って勝ち誇る観客ってよくいますけど、映画って「ネタをいつまで隠し続けられるか」っていうチンケなゲームじゃないんですよ。
かつてこのブログで大酷評した邦画ホラー『サイレン』(堤幸彦監督)も主人公の妄想オチなんですけど、オチに至るまでの緊張感という点ではスッカスカですからね。その点がハイテンションとは全っ然違うわけです。
スプラッタホラーとしての怖さを存分に表現し、軽視されがちな二重人格ネタをうまく取り込んでいる。かなり技術的に目を見張るものがある監督だと思いました。脚本・監督はアレクサンドル・アジャwiki見たら寺沢武一の『コブラ』を撮ろうとしてるって!
解離性障害=主人公が殺人を犯していた、ってのもベタすぎるんで解離性障害を事件解決に役立てるってのはどうなんですかね? 国内ミステリにありそうですけど。