MONEYBALL

マネーボール』を観ました。アメリプロ野球MLBのジェネラルマネージャー(チームの編成を任せられている役職)を主役にした物語。ビリー・ビーンという実在のGMがMLB史上初の20連勝を飾るチームを作り上げるまでを描いています。
野球というスポーツを題材にした映画を裏側から描いたという意味で斬新だったと思うのですが、興業としては失敗だったみたいですね。
ノンフィクションならではの強みと、ノンフィクションだからこその弱さが同居している作品だと言えます。
現実に沿って描かれたストーリーだから説得力があってドラマ性に厚みを持たせるのに成功しているのですが、現実に無かった要素を無理やり付け足す事に躊躇してしまい、クライマックスがクライマックスになりきれていない。
個人的にも中盤までは面白かったです。古い慣例にまみれた業界を革新的な主人公が突き進んでいく姿。心地良い。
主人公の敵は、ライバルチームではなくチーム内にいる。自分のスカウティングを否定されて歯向かう古株スカウト、抜擢してもやる気を見せない選手、意図したチーム編成に従わない監督。
こういった障害をどのように乗り越えていくのかが見せ場なはずなんですが、監督に対する対応だけが描かれてなくてすごく残念でした。
チームの監督を演じているのは、フィリップ・シーモア・ホフマンポール・トーマス・アンダーソン監督作品でお馴染みの実力派。ブラッド・ピットと対立の構図が描かれた時はかなり興奮したんですよ。2人の対決はどんな結末を迎えるのか、って。でも期待は裏切られました。
トータルでは見応えあって面白かったんですけど、クライマックスの落とし方はちょっと地味でしたね。主人公はレッドソックスからGMとして史上最高額のオファーで引き抜かれそうになるんだけど「金額で人生を左右する事は二度としないと決めた」と言って断るんですね。このシーンにいるのが主人公と、主人公の補佐をしていたおデブ君(を演じたジョナ・ヒルアカデミー賞ノミネート)の2人っきり。
wikiを読みながらこの映画を見たんですが、一度受諾した高額オファーをテレビインタビューで撤回したらしいんですよね。時の人となってスポットライトを浴びながら、それでも自分を貫くという描き方にしても良かった気がします。映画としてそういうスケール感を求めてしまう自分がいました。
味わいが上品すぎたかな。