サボタージュ

サボタージュを見ました。



http://www.sabotage-movie.jp/



監督は『エンド・オブ・ウォッチ』のデヴィッド・エアー。主演はアーノルド・シュワルツェネッガー


今回シュワ氏はDEAこと麻薬取締局の隊員を演じています。


近年、映画やドラマの題材としてやたらと取り上げられるのがアメリカ−メキシコ間の麻薬戦争。メキシコギャングの容赦無いやり口はモチーフとして新鮮で、様々な形でフィクションに影響を与えています。



DEAでも凄腕の面子が集まっているのがシュワ率いるチームで、彼らは潜入捜査を駆使してギャングやマフィアと渡り合ってきた歴戦の強者。とはいえメンタル的には法の執行者というより犯罪者に近い連中。



しかしシュワ演じるジョン・ウォートンは規律を重んじて、厳格なリーダーとして若いやんちゃ隊員たちをまとめる人格者。ブリーチャー(破壊者)というコードネームを持ちながらも、確実に結果を残すエリート。








しかしある事件をきっかけにブリーチャーのチームが崩壊していく。チームメンバーが次々と殺害され、無残な姿で発見される。エグすぎる手法、見せしめ的に展示される死体。ブリーチャーはチームの立て直しを図るべく、真犯人の痕跡を追って奔走するが…



あらすじはこんな感じなんですけど、まずこの映画を見ていて驚かされるのが、ジョン"ブリーチャー"ウォートンは、とあるギャングのアジトを襲撃する際にアジトに隠されていた金をチームでグルになって着服しようとするんですね。しかし隠し場所に辿り着いたら金は消えていた。一体誰が何のために!? そのフーダニット要素が物語の推進力を生みます。



現代的ヒーローに暗い過去はつきものですけど、この映画において純粋なヒーローは存在しません。まともそうに見えるシュワも着服を企てたアウトロー野郎ですからね。



つまりこれは一種のノワール系アプローチというか。ブリーチャーというキャラは、『エンド・オブ・ウォッチ』の警察官コンビのような純粋な正義感に突き動かされる主人公ではないんです。俺の金を奪った奴は誰だ!という動機で動いている。そこがシュワルツェネッガー主演作品としては新しいんですね。



こっそり盗もうとしていた1000万ドルが姿を消し、さらに殺人事件までもが発生して隊員たちは疑心暗鬼化。ブリーチャーはもう一度チームを叩きなおして再出発を図ろうとするのですが、さらなる死者が出て修復不可能状態に。かつての仲間同士で殺し合う羽目になります。



クライマックスでは斬新なアプローチを見せるカー&ガンアクションになり、壮絶な殺し合いの末に「真犯人」の正体が観客に明かされます。フーダニットを軸として展開するミステリ的なシナリオであり、なかなかの牽引力だと思います。



真相が明らかになった瞬間、自分が見ていた映画がなんだったのかを理解して、けっこうな興奮と感動に浸りました。オチもなかなかのノワールテイストでした。



色んな事情が噛み合った結果小さくまとまってる感はあるのですが、これくらいのチャレンジ精神を持ったシナリオが、現在絶好調なデヴィッド・エアーの手によって映画化されるのは歓迎すべきことだと思います。



当初のシナリオとオチについてはプロデューサーがNOを出し、現在のバージョンとして固まったらしいですが、本来どのような展開でどういうオチにしようと企んでいたのか気になるところです。改変を経てもなお刺激的な作品になっているこの映画、なかなかの珍味ですけど悪くなかったですよ。



ガンアクションはかなりリアル系で好印象。First Peson Shootingゲームが好きな私ですけど、前作エンド・オブ・ウォッチに引き続いて銃撃戦の緊迫感を描く手腕は流石だなーと。カーアクションも「町中でカーチェイスした際のリアルとは何か」についてちゃんと回答を用意していてエラいです。というか爆笑しました。



予告編でシュワ氏がつぶやく「ぶっ殺してやる」という台詞が良い意味で効いてきます。ノワール系アクションが好きな人は是非ご覧ください。こういうのこそデヴィッド・エアーの作風なのです!