殺人の追憶

えいがゾンビのクセにけっこう映画を見ているね。えいがゾンビなら映画観まくれって? うん、ほんとそうだよね。

そもそもゾンビ映画が見たくなってビデオレンタル店カードの更新をしたのだけど、そこの店にはロメロのゾンビものが一本もないんだな。何やってんの俺。なんでバタリアンが生き残ってロメロものが無いんだろ。バタリアンはbullshit度数かなり高いって。

さて、この前見たのが 監督:ポン ジュノ 主演:ソン ガンホ、キム サンギョン [Memories of murder/殺人の追憶]です。DVD。レンタル。

http://www.cqn.co.jp/mom/

それにしても外国人の名前を書くときにポン・ジュノとかソン・ガンホって書くけど、間にある ・ ってどういう経緯で付けられるようになったのだろう。明治維新以降とかその辺の時代に1st name と 2nd name を分かりやすくする必要があったのかな。

・ を入れる事に若干の抵抗があるので基本的には入れないようにしたいのですが、入れないとはてな上でキーワード認識してくれないという事態に。外人の名前なんてあまり出てこない日記ですけどね。

ジョージ・A・ロメロ と書くと ・A・ の部分が顔っぽいって書き込み2ch芸スポ板で見た。ロメロのゾンビ祭りが開催されるそうですよ。ゾンビ柄のアロハシャツ超欲しい!とか思った。

http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=4652

余談はさておき、Memories of murderですが。。。


あまり韓国映画を褒めてると工作員扱いされそうな昨今ですが。

なぜ見ようと思ったか。近年の韓国映画の中でもかなり評価が高い、気がする。本格派、のニオイがする。実際に起こった事件を元に作られたフィクションということでそういうところから発振した映画がどのようなスタンスを見せるのか、という意味で気になっていた。そんなところです。

田舎町で性的暴行を受けた後で殺害された女性が見つかった。数日後にも1km離れた位置で同様の手口で殺害された死体が見つかった。洗練・徹底されているとは言えない初動捜査のせいもあって決定的な証拠は見つからなかった。

捜査にあたったパク刑事は、最初の被害者につきまとっていた男がいるという情報を元に知的障害者のクァンホを拘留し、尋問する。犯行を否認するクァンホに苛立つパク。そんな日々を送っている中、路上で女性にしつこく迫っている(ように見えた)男を発見。蹴り飛ばし拘束するが、その男はソウルから派遣されたソ刑事だった。

パクは誘導尋問や証拠捏造で逮捕にこじつけようとする。クァンホは殺人の手口を証言しはじめるが、自白として扱えるようなものではない。無理やり早期解決を図ろうとした捜査陣はクァンホを現場検証の場へ連れていくが、クァンホの父親が現場に乱入して検証は中止となってしまう。

それに対しソ刑事は書類をじっくり検証して犠牲者の共通点[赤い服を着ていた美人である]と事件当日の共通点[雨が降っていた]を見つけ出し、さらに同じような状況で行方不明になり、捜索願を出されている女性がいる事に気付く。機動隊を動員させて広大な農地を捜索したところ、腐敗の進んだ遺体が発見される・・・

・・・と、序盤だけ書いてみました。秀逸さを感じさせるのは、韓国の80年代後半、地方の田舎町という背景と連続殺人事件のからませ方。序盤は「昔の刑事は馬鹿だったのね、はいはい」という感じで描写の浅さに辟易する部分もあったのだが、それがダイナミックな波を生む伏線となってくるところが、絶妙!とさえ感じさせる。

エピソードの1つ1つも[展開を生み出すための嘘・フィクション性]と[リアリティ]との狭間にあるポイントの難しい見極めが出来ている。さきほど公式サイトでモチーフになった事件の経緯が書いてあるのを見たら「え、あのエピソードが実際にあったのか!」と感じる部分が多々あった。

異常犯罪はフィクションの専売特許なんかじゃないわけで。人の想像力、壊れた時の堕ちていく様にフィクションか否かという部分で大差はないのだ。

あとは映像イメージに対する考え方、捕らえ方。ラストカットの重みとかとてつもない。そこから問いかけられる、全人類への命題。こういう切り口で人間を描いた映画って今までにあったのかな? とかそれくらい感心してしまった。自力では気付かなかったけど、排水溝から事件が始まってトンネルで事件が閉じる、というイメージの鮮烈さとか・・・

これまた素晴らしいと言わざるを得ない映画だったわけで、それを生み出したのは個人の才気という突然変異的ファクターではなく、韓国映画界という底の見えないブラックボックスに明確な理由があるように思う。恐ろしく、頼もしい。