ZOO
オナイドシ作家乙一さんの短編集を原作にした映画[ZOO]を観ました。レンタル。DVD。
- 出版社/メーカー: 東映ビデオ
- 発売日: 2005/08/05
- メディア: DVD
- クリック: 37回
- この商品を含むブログ (103件) を見る
意味ねえ。ホント。意味ねえ。納得できる完成度を持ったのがアニメーションの[陽だまりの詩]だけという体たらく。特にラストの[ZOO]は原作をクソまみれにしてくれたので観終えた瞬間の憤りたるや。。。どかーん
1本目[カザリとヨーコ]
溺愛されるカザリと、虐待されるヨーコ。二人は双子。
原作の「ポップな文体でテンポ良く、ダークな世界観を描く」という部分が失われていて残念。5本の中ではタルみも少なめだけど、それでもモノローグのチョイスとかタイミングとかそれに応じた映像テンポとかが普通すぎる。
私は[モノローグは反則]サイドの人間ですが、ブラックジョーク感が増幅されるなら、もっとモノローグが大量にあっても良かったと思う。
原作の[悲惨]な状況をそのまま映像にしてもインパクトにならず、もっとエッヂの効いた(なにそれ)展開があっても良かった。
2本目[Seven Rooms]
監禁された、姉と弟。連なる7つの部屋。逃れられない殺戮。
お友達のやまきょ監督による映像化を希望した事も記憶に新しい、純然たるホラー。自分で撮れよ。
キャラクターの描き方がどうもゆるい。表情にしろ会話にしろ精度を欠いていて、ホラーに浸りたい気分を萎えさせる。
スプラッタ描写はきれいさっぱり無くなっていて非常に残念。スプラッタ描写を目撃したテイで語る、という描写も無い。恐怖が湧いてこない。
ラストの描写も、原作にあった重要な要素がすっぽり抜け落ちてるし。。。シーン構成的にもセンス悪くてキレが無い。何考えてんだろ。そこに何らかの意図があるのかな。無いとしか思えない。ため息出ます。
3本目[So-Far(そ・ふぁー)]
父は母を、母は父を見失った。壊れかけた家庭で少年は生きる。
乙一的アンリアルなシチュエーションを前提にした展開。オチのキレなどを考えると、インディーズでもこれくらいのもの撮らねば、と思ったりもするが、中身は薄め。
某神木氏、杉本哲太、鈴木杏樹がそこそこの演技精度を見せ付けるので見所になっています。じっくりした描写の中、神木氏が涙をハラリとあふれさせると、それはそれは威力がありますです。
そう考えると他の作品は役者が弱いのかも。
4本目[陽だまりの詩(し)]
「誕生、おめでとう。」アンドロイドは主人を埋葬するために生まれた。
原作を読んだ時に号泣&大絶賛した作品である。アニメーションなので見る目が甘くなってしまう。実写だとどうしても「そこは違うんじゃねーの」と思ってしまうけど、アニメを崇高な表現だと思いすぎている感があるね、チルさんってば。
主人もアンドロイドというちょっとしたオチがあるのですが、序盤、主人公アンドロイドが首を動かす度に動作音がするけど主人はしない、という部分が引っかかった。
首が取れかかったアンドロイド、みたいな描写は実写じゃ無理なのはわかっているけど、改めてアニメ化されると1つ1つのイメージが鮮烈だった気がします。原作の細かい部分もちゃんと再現できていたと思う。
やっぱ実写系の人よりアニメ寄りの方がテンポとか理解してるのかなぁ。アニメーション製作って時間を埋める作業って感じもするし。無駄も無く、それでいてテーマがしっかり伝わって良かったです。
5本目[ZOO]
恋人を殺したのは誰だ! ・・・俺だ。
↑のまとめは決して正確ではない。↑は原作の物語。映像化された[ZOO]は原作のブラック寄りの滑稽さを一切消し去っていた。そもそも違う物語です。
村上淳の雰囲気が思い切り前面に押し出された序盤。フィルムっぽいトーン。無機質な部屋。セリフは無いに等しい(下手だから)。展開というものがなかなか生まれない。恋人(これまたオサレ)とイチャついてるだけ。
原作は[恋人を殺したという現実から目をそらして復讐にひた走るフリをする]という部分が滑稽かつブラックなテイストを生んでいたのだが、映像化されるとその辺の描写が消滅。恋人を殺した。写真を撮り続けた。描写的にはそれだけ。意味ない。
撮った連中は撮った連中で、原作を読んでも[こんなの撮ったって意味ない]と思ったのだろうか? そう思ったんだからあれだけナンセンスなものに仕上げたんだろうなぁ。うん、そうに違いない! と無理やり自分を納得させる必要が生じるくらい、理解不能なものになっていた。
だったらおまえ撮るなよ。。。
観終わって、原作の旨みが全て廃棄されたという事実を飲み込んだ上で振り返ると、色んな小細工をめいっぱい駆使してるところが失笑級。村上淳もここまで無駄なオシャレ世界に足を踏み入れたくは無かっただろう。
事実を受け止められない俺を現実に引き戻したのは・・・というオチも華麗に蒸発してしまっていたし、完全に別のストーリー。そしてそのストーリーには価値も意味もない。[下らない]とはこのことだな。
乙一に巣食って生き延びるフェイクえいがびとが沢山関わった映画でした。監督の名前とか知る必要ない。撮った方も撮った方で、別に名を残そうとか思ってないのではないかと。
うーん辛口。