戸梶圭太「レイミ」

 「レイミ -聖女再臨-」何気なく読み始めた。戸梶圭太作品の中でもトップ5にランク入りさせたい、大好きな一冊である。
 時間軸とシチュエーションの構成が巧みで面白いなぁ、なんて事をいまさらながら実感している。
 4人が待ち合わせたビルの中の駆け引きを描いた「約束の日」、その4人とレイミの馴れ初めを描いた「出会い」、レイミについて調査を進める紫乃の「空白の1年」、伝聞やネットから浮かび上がるレイミのドイツ時代が描かれた「過去」。
 単純に並べるなら過去→出会い→空白の1年→約束の日という順番だが、4つのシチュエーションが入れ替わりながらバランス良く描かれる事でテンポと緊張感が維持され、恐怖が膨れ上がっていく。
 恐怖の質はクトゥルフ神話に匹敵する無茶なオカルトぷりなのだが、丁寧にじっくり描かれる事でリアリティが失われていない。
 いくらラヴクラフトでもここまで練った構成は生み出せなかっただろうと思う。狭い範囲でしか読書してない自分が言うのもアレですが。
 ただ、キリスト教的な世界観を構成する神・天使・悪魔という存在を取り入れた点はやや安易な印象。終盤の展開をこういった要素なしで乗り切れれば完璧だった。
 二度目の復活を阻止されたレイミが、外伝ともいえる「マイ・スウィート・ファニー・ヘル」でどのような活躍を見せてくれるのか楽しみだ。

Reimi―聖女再臨 (祥伝社文庫)