M-1振り返り

  • 笑い飯。ボケの発想が「動きの面白さ」という部分に限定されるのは苦しい。あえてそれを選択するところが怖いもの知らずの証明。ツッコミの鮮度とテンポ、コンビ間の距離で奇妙な空気を作っていく。いかに最高速を出すかだけを考えているレースチームみたいだ。コーナーで上手に曲がれるかどうかなんて考えていない。順位さえも考慮しない。
  • POISON GIRL BAND。独自のテンポと4分という枠のミスマッチが痛い。空気が伝わる、最初の小ボケ、最初の意外なボケ、勢いが出てきたところで、終わり。異様な発想のキレ味は後になってどんどん高まってくる。
  • ザブングル。ツッコミが上手いとは思えない。漫才という枠組みを受け入れてたっぷり練習してきているのに、ツッコミの姿勢が「オイオイどこ行くんだよおまえ」と傍観的であり続ける。ボケが進行役として漫才をリードし続けるからツッコミが「合いの手」に近い。あのツッコミじゃボケは増幅しない。ツッコミで増幅するボケでもない。加藤の漫談でもいいんじゃないの、と。加藤顔面の緊張感は評価したいけども。
  • 千鳥。松本は「コントになってしまっている」と嘆いた。ツッコミのノブが漫才の中で発生するコント性をすんなり受け入れ、さっさとスイッチを切り替えてキャラに入り込む。これが千鳥のスタイルなんだなぁ。ノブのツッコミらしからぬ立ち位置を面白いと感じるようになれば千鳥の漫才がとても面白くなる。
  • トータルテンボス。どっちがネタを作っているんだろう。ボケのリード力、ツッコミのリード力、どちらも強くて個性的だ。以前はボケが押され気味でツッコミの文体が浮いていたけどバランスが良くなってきた感じ。旅行代理店ネタは、途中まではツッコミが若干強かったものの終盤の乗っかりでボケの方に比重が傾く。そのせいで最終的にいい形で終われたように見えた。旅館ネタにはそういう要素が無かった。
  • キングコング。4分という枠にケンカを吹っかけるように、ありったけのボケとツッコミを詰め込む。こっちの方向の漫才でキングコングに勝てるコンビはいないんじゃないだろうか。キレのあるアクションも圧倒的。ザブングルのアクションがみすぼらしく見えるのも致し方なし。キングコング漫才の追求が今年で終わらない事は喜ぶべき事だ。揃って中年な審査員をしっかり笑わせるようなネタじゃないのが敗因かもしれない。
  • ハリセンボン。観る者の中で「期待がふくらむ時間がある」くらいが一番笑えるのかもしれません。5組目6組目の後にこのテンポだからこそ緩和が生まれ、笑いが生まれたのか? それとも女性への蔑視が自分の中に発生したのか? ツッコミが全体をリードしている分ボケで笑う隙間が無い? ボケのキレを前面に出したネタが見たいかな。
  • ダイアン。松本がツッコミ(のルックス)を「浜田に似ている」と評しましたが、その言葉を受けてから見ると漫才自体がダウンタウンっぽく見えてくるから困る。ボケの低体温テイストはかつての松本にそっくりで、ツッコミが放つ怒気はかつての浜田を感じさせる。突出したボケの発想と、それを殺さないようにしているツッコミの丁寧さ。もっと見たい。
  • サンドウィッチマン。つかみ・導入部が無かったらそのまんまコントに成り得る。さっさとシチュエーションに飛び込むブラックマヨネーズみたいな潔さ。コントの中に存在するキャラクターとして完成されている両者。評価するべきそのプロデュース力。ムカつかせるボケとそれにイラ立つツッコミ。同タイプのアンタッチャブルと違うのは、ツッコミが全然笑わないところ。常に淡々とツッコミ、怒る。間が良く、コンビの空気がすぐに広がり、濃くなっていく。ボケとツッコミ双方がバランス良く笑いを生み出すのも凄い。ボケだけで成立する笑い、ツッコミありきで広がるボケ、ツッコミによってボケのおかしさが伝わる部分。パターンが多い。順番によって助けられた部分はあれど、最後にブチ抜けるだけの脚は持っている。素晴らしい漫才師でした。