十三人の刺客

 三池崇史監督作品「十三人の刺客」を観ました。
 小細工じみた転調を設けず、前半でじっくりフリを効かせて後半は思いっきりチャンバラ。実際は2:1くらいのバランスでしょうけど。
 ヒットして名前を売りたいとか、お手軽な原作でスマッシュヒットにならないかなーとか、うちの事務所の若手に代表作あげたいなーみたいな、そういう下世話な欲望がこの映画からは臭ってこない。
 この映画を作りたいという渇望だけが撮影を動かす原動力になっている。スタッフ・キャストが同じゴールを見据えている。あまりにも純粋。劇中で十三人の刺客が抱いた決意とよく似ている。
 チームとしてまとまりが良いからか、キャスト1人1人が無駄な個性を持とうとしていない。カメラも無駄なフォーカスを行わない。
 それでも各人は必死に侍でいようとする。しっかり侍として生きている姿をカメラは決して撮り逃していない。
 松方弘樹のカッコ良さを観ていたら「梅宮T男とは格が違うな」と思いました。役所さんや市村さんら、べテラン勢はとてつもない圧力でしたね。あとは伊勢谷さんの使い方が面白かったです。伊勢谷さんの出演作品全然見てませんけど。
 本能だけで映画を撮りきることが出来る日本の映画監督は三池だけなのかもしれないなと思った。そう考えると映画を撮るのが怖くなりそうである。