ゴーン・ガール

ゴーン・ガールを見ました。2014年12月12日、ユナイテッド・シネマとしまえんにて。

http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/








 完璧、フィンチャー最高傑作、と絶賛の声が鳴り止まない作品です。





 結論から言うと…完璧と評するには距離がある、少なからず弱みのある作品だと思いました。

 ネタバレガンガンしながら主な不満点を中心に書きますよ。この記事書いてたら3回くらい「戻る」押しちゃって消えまくったので大雑把モードでーす。

 エイミーは夫への復讐として、「自分は夫に殺されました」という証拠を大量に残して蒸発するという手段を選びます。離婚でもなく、殺害でもなく、法の力(死刑)で夫を殺すという画期的な復讐。

 雑に拭き取られた血痕、友人の証言、オンラインに残る買い物履歴、夫の指紋が残った凶器、そして夫に怯える日々を綴った日記帳。綿密で、警察の疑惑の目を夫に向けるためにやれることは全てやっています。

この証拠の捏造っぷりは立派なんですけど、その証拠を第三者にも気付いてもらうため、夫へ向けた「ヒント」(メモ)を残してるんですね。このヒントは物語の牽引力にもなっているんですけど、ミステリとしての物語を展開させるためのアイテムとしては反則だと思うし、興ざめしちゃったんですよ。

 第三のヒントを読み解き、妻の復讐に気付いたニックなんですけど、あの「無駄遣いの山」を見て放置した理由がよく分からないんですよね。これを見られたらヤバい、さらに自分への疑惑が濃くなるって気付いてるはずなのに何も手を打たないから、エイミーによる通報でそのまま警察に発見されてしまってる。別にその展開はいいけど、せめてニックにアクションを起こさせてほしい。

 エイミーも、完璧なタイミングで通報したみたいになってるけど、納屋を調べた時にニックが撤去して既に何も無い可能性だってあるしなあ。失踪しておきながらそこまで完璧に全てをコントロールできると考える、そしてそんな浅はかなエイミー(作者)の思い通りに展開していく物語そのものにずっと首をひねってました。

 コテージ暮らしのエイミーがロクデナシコンビによって計画をつぶされるところも、物語を動かすためには必要なんだろうけどエイミーというキャラクターの完成度がドンドン下がっていくのを見せられているようで気持ちよくない。

 計画変更を余儀なくされたエイミーは、かつて自分に惚れていて、結果的に裁判沙汰に追い込んだ男・デジー・コリングスと連絡を取って、ひとまずの隠れ家を得ます。当然その男はエイミーへの鬱屈した愛情を爆発させ、全てを与えながら束縛しようとする。

 このあたりからエイミーの感情が見えなくなります。ニックをハメて逃避行して以降はすごくイキイキしていたエイミーが何を考えているか分からなくなる。演出としてそこにフォーカスしなくなるんですね。それも、その後のエイミーによるコリングス殺害の衝撃を引き立てるためなのかと思うと、上手いなあというより逃げに見える

 そして大量の監視カメラによって全てを見られていたはずのエイミーが誰にも疑われない形での殺人を遂行できたとは思えない。虐待やレイプを訴えたところでそれらの証拠は無いし、カメラ動画をそれっぽく作り上げたように描かれてるけど、カメラの死角を突く完璧さみたいな部分は描写として中途半端で、行動の衝撃度だけで押し切ってるように見えるんですね。

 エイミーは結局元の鞘に収まって、嘘と欺瞞に満ちた夫婦生活を送る事を選ぶ。ニックもそれを拒む理由が見つけられず、夫婦生活のリアリティを観客に突きつけて物語は終わる。

 ニックと再会してからのエイミーも、どこかスッキリして全てやり遂げたようなクールな立ち振る舞いに終始していて納得できないんですよね。もう少し演技の幅を持たせてあげてもいいんじゃ? リアリティよりも不可解さや嫌悪感を抱かせることを選択した演出に見えて、そういう演出スタンス自体に嫌悪感を抱きました。

 ミステリの運び方としてどうしても上手くないと感じたし、ショッキングな展開を選択したエイミーというキャラクターにも魅力を感じない。これじゃあ自分の中で高く評価できるはずもなくて。原作ってミステリ界でどれくらい評価されてるのかなあ。

 ロザムンド・パイクの芝居は面白いですけど後半の人形みたいなキャラはどうかと思うし、瞬間的に男を騙そうとする勝負どころでは笑える芝居見せてくれるんですけど、凄い女優を見たなあ!って感触は無かったです。

 最後になりましたが、ニックとエイミーの最初のベッドシーンがクンニから始まったのは感動しました。以上です!