クトゥルフの呼び声

 待ち時間にラヴクラフト全集2に収められた「CALL OF CTHULHUクトゥルフの呼び声」を読んだ。
 ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが生み出したクトゥルフクトゥルー)神話の頂点に位置づけられる存在である“旧支配者”クトゥルフがこの世に姿を現した悪夢的地獄的な瞬間を描いた記念すべき作品だ。
 よく考えるとチルさんは、中学生の頃にこの作品を読んでいたらしい。中学の授業で木彫りのクトゥルフ像を作った覚えがあるんです(ヤバー)。
 10年以上読んでいないというわけではないけど、久々に読んでみるとこの作品が生み出す心地良さが段違い。この小説の位置づけがよく見えるようになった。
 クトゥルフの呼び声は語り手が、入手した資料とそれに関する所感を至極シンプルに並べ立てるというかなり無骨な構成。しかしその無骨さがカッコ良い。
 語り手が時折見せる「まぁ、それはいくらなんでも狂言だと思うけど」という部分がニヤリとさせてくれる。拘留された密教徒達の「生け贄を殺したのは黒い翼の神々である」という主張等がもし本当だったらと考えると…
 ノルウェー人航海士が狂人的な海賊を撃退・皆殺しにする場面は、もう少し海賊のブッ飛んだビジュアル面を描写してほしかったが、その直後海上に現れたルルイエ神殿の超然とした描写や、クトゥルフに遭遇した瞬間2人がショック死したり3人が邪神の鉤爪によって秒殺される描写の絶望感は面白すぎる。
 語り手が絶望と諦めをつづって物語が閉じられ、そのスタンスの徹底ぶりは一見あっさりしすぎているのだけど、ラヴクラフトの生み出した圧倒的な畏怖性は唯一無二のスケール感を誇っている。面白い!