有限と微小のパン
森博嗣「有限と微小のパン」を読了。S&Mシリーズ最終巻のようです。シリーズ第1巻の犯人である天才プログラマ・真賀田四季が再登場。
犀川vs四季の天才対決を勝手に妄想してしまいましたが、中盤までは焦らされます。
この作品はミステリィとしての面白さよりテーマ性に目を奪われます。四季が放ったテーゼは作者の投げかけたテーゼでもあり、脳味噌の裏っ側にピッタリと貼り付いてきます。駆け足で読みすぎたのでもう少し吟味する時間が欲しいところではあるのですが。
数々の事件に熱を上げてきた西乃園萌絵が犀川の言葉を受けて冷静になる。言うなればつまらない大人になっていく。それらの描写を目の当たりにした読者も、少しだけ大人に近付いてしまっているのかもしれない。どことなくミステリ小説に対するアンチテーゼも嗅ぎ取ってしまった作品でした。
読み終わった後で四季の「再登場シーン」を思い出してニヤニヤしてしまいました。今日という一日が微小なハッピーを得た。